短編

□見せ付けて何が悪い
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行き交う人々、近くにいた者達がそろって同じ所へ視線を注いでいた

そこには有り得ない光景があったからだ

氷の長官とされるあの葵 皇毅がこれまたあの紅 秀麗を運んでいる・・・・・・


お姫様抱っこで!!!


「見てる暇があるなら仕事をしたらどうだ」

周りの無遠慮な視線に一切動じないものの、煩わしそうに呟いた

「それというのもお前のせいだな」

皇毅は後ろをチョロチョロと着いて来ている男を一瞥した

「え〜?もしかして僕?」

晏樹はすっとぼけたように首を傾げた

「他にいるか?」

「僕は唯単に羨ましがってただけだよ?」

それがいけなかった

「あれだけ騒げば嫌でも気付く」

「そう?・・・でも皇毅にとってはよかったんじゃない?」

意味ありげに微笑むと皇毅の前に立ち止まる

「・・・どういう意味だ?」

「そうやって見せ付ければ大抵の男は諦めるからね」

晏樹は周りで未だに見ている官吏達を回り見た

「ず〜っとお姫様を見てる訳にもいかないしね?」

「そうだな。悪い虫を全て防ぐことは出来ないからな」

「だから反っていいでしょ?でもこれ見ても諦めないのがいるから厄介だよね〜」

「お前とかな」

皇毅は鋭い眼差しを晏樹へと向ける

「そういうこと」

どこ吹く風というように晏樹は微笑む

「僕のお姫様を僕だけのお姫様にしたいんだよね」

晏樹は妖しい微笑みを残してその場を立ち去った

「ふっ、お前のものになどなるわけがない」

この私がいるうちはな……

皇毅は口元を歪めると再び歩み始めた

死角に入った時、皇毅はゆっくりと秀麗に口付けた
気絶して気付けない秀麗だったが、この時、確かに温かみを感じた

キョンシー扱いされた皇毅の唇は秀麗よりよっぽど温かかった



〜END〜

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