短編

□口実
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夜、静寂の中笛の音色が響き渡る。

ピ〜ヒョロッヒョロロ

秀麗はこめかみを押さえ窓を開ると冷たい風が流れこんできた。それと共に一人の青年が音もなく入ってくる。秀麗は驚く様子も見せずに溜め息をついた

「龍蓮、何であんたは毎回夜中に部屋の窓から入ってくんのよ!」

怒られているにも拘わらず龍蓮は涼しい顔で笛を吹こうとした

「ちょっと龍蓮!こんな夜中に奇怪音出さないで!近所迷惑でしょ!」

秀麗は素早く龍蓮の笛を奪い取り机の上に置く。すると龍蓮は珍しく不平を言うこともなくベットの上に腰掛けた。次いでベットを軽く叩く

「・・・・・何よ?」

龍蓮は無言で秀麗を見上げる。どうやら座れということらしい。仕方ないなと隣に少し間を空けて座る

「・・・・何でいちいちくっついてくるのよ!?」

龍蓮は秀麗に近付き抱き着く。秀麗は引きはがそうと龍蓮の手を取った

「!?・・・冷たい」

龍蓮の手はとても冷たかった。まるで死人のようだと思った。

「ずっと外にいたのだから当然だろう」

「もっと早く家に来ればよかったのに」

「行けば何故来たと怒るだろう?」

「夜中に来られる方が怒るんだけど」

怒ってる様に言っているが先程のように怒鳴ったりはしなくなった

「秀麗、暖めてくれ」

そう言って秀麗にまたもや抱き着く。

「ちょっと龍蓮!寒いなら部屋温かくするから・・・」

火を起こそうと龍蓮を押すが、びくともせず、もっと力強く抱きしめられる

「このままでいい。・・・秀麗はとても暖かいな」

耳元で囁かれ秀麗は少し頬を朱に染める。すると龍蓮はゆっくりと秀麗から体を離していく
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