短編
□101回目のプロポーズ
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超絶美形でこの邸の主である黄 鳳珠は毎度のことながら勝手に入ってきた紅 黎深に真顔で言い放った
「秀麗を嫁に寄越せ」
直後、黎深が鬼のような形相で新作仮面を投げ付けたのは言うまでもない
「黎深、いつまでそうしているつもりだ?」
黎深は部屋の隅で仮面にグサグサと短剣を突き刺している
「性格はいいし料理は美味しいし可愛いしな。それに私の顔を見ても動じない」
黎深は手を止め振り返る。何とも不機嫌そうな顔だ
「ふんっそんなの当たり前だろう。兄上の娘なのだからな!あ〜も〜本当可愛いし優しいし」
官吏がもしこの笑み崩れた黎深を見たら失神するだろう。しばらく微笑んでいるといきなりキッと鳳珠を睨みつけた
「いいか鳳珠。貴様に秀麗は絶対やらん!!」
「何故だ」
「お前みたいな仕事が恋人の変人奇人の仮面野郎なんかに私の秀麗をやれるか!!」
「お前が持ってきてるんだろうが!!それにお前のものではない。名乗ることすらできんくせに」
「な、ななな・・・自分が名乗れるからって!!わ、私だっていつか必ず名乗ってみせる!!」
「何年後になることやら」
「ち、近いうちに必ずや・・・!!」
鳳珠は溜息をついて「兄・姪馬鹿」の友人を見遣った
「どちらが先だろうな?」
一人ブツブツと名乗りの練習をしていた黎深はその呟きに反応する
「何がだ?」
鳳珠は外を見たままさらりと言った
「お前が名乗るのと私のプロポーズ」
瞬間、黎深は蒼白になり魂が抜けたようにポカーンとしてしまった。黎深が現実逃避をしているのを横目に鳳珠は秀麗へのプロポーズの練習をし始めた
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