短編
□予想外
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皆の人気者、紅 秀麗は貴重な資料を借りるため吏部へ
「失礼します」
中に入ると官吏の殆どが秀麗の方を向いた
(な、何……?)
秀麗は何故こんなに見られているのか解らず、緊張しながら侍郎室へと入っていった
「紅官吏めちゃくちゃ綺麗になりましたよね〜」
「俺の嫁にしたい」
「バッカ、お前じゃ不釣り合いだろ」
手を止めることなく話すのは、さすがと言えるだろう
「おい、そんなこと言ってる暇あったらもっと高速で手を動かせ!」
年配官吏に怒鳴られ慌てて口を閉じる
「こんな会話、アイツに聞かれてたら……」
゙アイツ″というところで反応した。その中の一人が恐る恐る尋ねた
「本当に紅官吏はその人と…両想いなんですか?」
「本当だ」
その言葉に皆落ち込みモードである。涙を流す者もいた
「くそっ、汗が目にしみるぜ!」
この日、仕事をマッハで終わらせた吏部官達は慰め合うべく飲み屋へ行くのを何人もの人に発見された
侍郎室へ入った秀麗は絳攸に資料の貸出許可をとっていた
「秀麗なら信用できるからな」
「有難うございます」(ニッコリ)
(か、可愛い!!)
絳攸は顔を朱に染めて目を逸らす
「じゃあ失礼しますね」
「あぁ……」
秀麗の笑顔に見惚れる絳攸はやはりと言うべきか、秀麗どアイツ"の関係を知らない。この後、知らされたことに放心し、ショックのせいか迷わずに目的地に着けたという
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「重そうだね」
後ろから声がしたと思ったら、急に持っていた物が軽くなった
「藍将軍!あ、あの…」
「さぁ、行こうか」
秀麗が自分で持ちますからと言おうとするのを楸瑛は先を促すことで遮った
「私が好きで手伝ってるんだから気にしなくていいよ」
「……有難うございます」(ニコッ)
柔らかい微笑みに楸瑛はドキッとした
(私をこんな風にさせるのは秀麗殿だけだよ)
目的地に着くと、楸瑛は秀麗に本を返した。秀麗はもう一度頭を下げると小走りに行ってしまった
「私も……諦めが悪いな」
゙アイツ″の存在を知りながらも中々諦められない自分に苦笑し、秀麗の小さな背を見送った
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