夢の終わりに 第二幕

□錆びた歯車
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酷く錆びた歯車だ。
随分長く手入れされていないらしい。

【どこをどうすれば正解だなんて、誰も言ってくれなかったのに】



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赤と黒と灰色の、
煤けた世界で男が言う。





「選ぶといい。
まだお前には選択する権利が残っている。但し、選ばなければ道はない。」


吐きかけられた言葉に、私はうずくまったまま動かない。あるいは動けないのかもしれない。

ただ、死んではいない筈だ。

だってあそこにいるのは『私』だから。


なのに、まるで他人事のように私はそれを見つめていた。


しかしそんな私のことなど意に介さないように、男は喋る。


「さて、と。
お前に提供するのは最悪なシナリオ≠セ。
一本道だが信頼性はないし保障もない。

…ああ、安心しろよ。

吐き気がするほど下らねぇが、他人のと比較したってそう違いはないんだからな。」

男はなにがおかしいのか、そこでひとしきり笑う。








意味がわからない。

なんなんだ、コイツ。







「つまりだな。
戻るべき道がないことは誰だって理解できる。
だがそれを納得する勇気は誰にもない。

傷もないのに痛むフリをして、
お涙頂戴の滑稽な演劇をしているってワケだ。


…さて、恐いか?

死は近くに来れば恐くないもんだ。
意外とな。
ただ意外過ぎて、理解する時にはもう死んでるんだが。」


そう言って、笑う。
笑っている───
あるいは狂っているのだろうか。




『こんなところ』にいるのに、血も泥もついていないソイツ。

むき出しの地面に這いつくばる私を見ているようで、どこか遠くを眺めているような目。




狂人は『ココ』で掃いて捨てるほど見てきた。
(狂うのに充分過ぎる程の理由がココにはあったから)



しかしこの男からは、また別の不穏なものを感じる。







───誰だ───?






男は私の思考を読み取ったかのように首を横に振った。

「今は関係ない。しかしいずれ全て理解出来る時が来る。
それも、シナリオ。
あれも、シナリオ。
───しかしお前が手を取らなければ、
はじまらない物語。」





そう言って、男は沈黙する。






その目が語る。









選べ≠ニ。









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