夢の終わりに 第二幕
□擦り切れた歯車
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擦り切れて小さくなった歯車だ。
随分と使い込まれている。
【思い出は優しいけれど疎ましい。醜い傷跡のようにいっそあの時全て無くしてしまっていたら。】
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「……でも。
ひとつ約束してちょうだい?」
「なぁに?お母さん。」
舌ったらずに問う我が子の頭を胸に抱き寄せ、
母親は優しい声音でこう囁く。
「強くなるのはいいけれど、人を傷つけたら駄目よ?」
「…なんで?」
苦しい、と腕の中で身をよじり、女の子は母親に聞き返す。
「強くなったら、お父さんみたいに戦わなくちゃ駄目なんじゃないの?」
「戦わなくていいの。」
「……そうだな。
そんな時が来なければいい。」
二人を見守る父親も、表情を陰らせてそう呟いた。
「?」
きょときょとと交互に両親の顔を見比べる少女。
そのころはまだ長く伸ばしていた髪が、ふわふわと揺れる。
「お父さん、お母さん。
ごめんなさい、 が変な事言ったの?」
「…あら、謝らないで。大丈夫よ。」
「ああ、大丈夫だとも。
母さんと、 はお父さんがちゃんと守るから。」
少女の父親が豪快に笑う。
「───だから何の心配も要らないわ。
大丈夫よ、 。」
そして少女の母親は、優しく微笑む。
*
忘れかけた幸福な時間を
何度も
何度も。
壊れたレコードのように
何度も何度も、
何度も何度も繰り返して
そして少女は
名前を無くした。
†
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