夢の終わりに 第二幕

□そして噛み合う歯車
2ページ/2ページ




さっきのような、安らかな気持ちで逝けたのなら、どれ程良かっただろう?
でも、もう。

「……怖いんだ……」

身体がみっともない程震えるんだ。
死の淵から引き戻されて。

「……死ぬのを、怖いと……思ってしまう……」







………





『生きたい』。





そう、望んでしまった。
生きていく価値なんてないはずなのに、死にそこなってしまった。
また毎日、何の意味もない呼吸を繰り返し、
大地に独りで立たなければならない。
……それが、耐えられなかった。




「……いっそ…………
…………殺してくれ。」

自分で死ぬことは出来そうになくて。

───わたしの懇願に、顔立ちにまだまだ幼さを残す少女は口を開く。









「やだよ。」



即答だった。




「………私は誰も殺さないし、死なせない。
そう、決めてるの。
だから、アンタを助けた。
……それにアンタみたいな、
『誰が死んでも、自分が死んでも関係ない』みたいな目をしてる奴には、心底腹が立つ。


───どうせ、自分はひとりぼっちだとか、
誰からも必要とされてない存在だとか、
そんな風に考えてるんでしょうが。





当たり前じゃない?




人は、一人で生まれて来るし、
自分自身は、世界に一人なんだから。


それにどんなに頑張っても、『他人』と『自分』は同じになれない。

違う個体だから。



───でも、



それは、別に寂しい事じゃないよ。





誰かに嫌われても、好かれても。

結局自分は、

自分自身にしかなれないんだから。



だから、一人でも。

悲しまなくて、いいんだよ。」






───そう言って、少女は笑う。






悲しまなくていい。
そう言う『彼女』の顔が、何故か悲しそうで。







「大丈夫。
もしあなたの傍に誰もいなくても、
私が、傍にいるから───

……さあ、まずは傷の手当てから始めなきゃね。」



その言葉に、わたしは驚いた。



「傍に…?」


「いるよ。
あなたが望むなら。
……私だって、実は一人だからね。独りで生きるのはカッコイイけど、それじゃ寂しいし。
別に誰かに縋って生きるのも悪くない。」




微笑む少女に、わたしはふたたび安心感を覚えていた。








───と。
唐突に、怪我による気だるさと眠気が襲ってくる。




「……?
……ちょっと、どうしたの?
しっかりして……!」

















───大丈夫だ。

わたしは多分、死なない。




幼いころからずっと、
探していた答を、
今、
与えて貰ったような気がするから。






少し、君の腕の中で休んだら、

またこの大地に二本足で立とう。














わたしたちは、







出逢うべくして、
出逢ったのかもしれない───





.
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ