夢の終わりに 第二幕
□そして噛み合う歯車
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さっきのような、安らかな気持ちで逝けたのなら、どれ程良かっただろう?
でも、もう。
「……怖いんだ……」
身体がみっともない程震えるんだ。
死の淵から引き戻されて。
「……死ぬのを、怖いと……思ってしまう……」
………
『生きたい』。
そう、望んでしまった。
生きていく価値なんてないはずなのに、死にそこなってしまった。
また毎日、何の意味もない呼吸を繰り返し、
大地に独りで立たなければならない。
……それが、耐えられなかった。
「……いっそ…………
…………殺してくれ。」
自分で死ぬことは出来そうになくて。
───わたしの懇願に、顔立ちにまだまだ幼さを残す少女は口を開く。
「やだよ。」
即答だった。
「………私は誰も殺さないし、死なせない。
そう、決めてるの。
だから、アンタを助けた。
……それにアンタみたいな、
『誰が死んでも、自分が死んでも関係ない』みたいな目をしてる奴には、心底腹が立つ。
───どうせ、自分はひとりぼっちだとか、
誰からも必要とされてない存在だとか、
そんな風に考えてるんでしょうが。
当たり前じゃない?
人は、一人で生まれて来るし、
自分自身は、世界に一人なんだから。
それにどんなに頑張っても、『他人』と『自分』は同じになれない。
違う個体だから。
───でも、
それは、別に寂しい事じゃないよ。
誰かに嫌われても、好かれても。
結局自分は、
自分自身にしかなれないんだから。
だから、一人でも。
悲しまなくて、いいんだよ。」
───そう言って、少女は笑う。
悲しまなくていい。
そう言う『彼女』の顔が、何故か悲しそうで。
「大丈夫。
もしあなたの傍に誰もいなくても、
私が、傍にいるから───
……さあ、まずは傷の手当てから始めなきゃね。」
その言葉に、わたしは驚いた。
「傍に…?」
「いるよ。
あなたが望むなら。
……私だって、実は一人だからね。独りで生きるのはカッコイイけど、それじゃ寂しいし。
別に誰かに縋って生きるのも悪くない。」
微笑む少女に、わたしはふたたび安心感を覚えていた。
───と。
唐突に、怪我による気だるさと眠気が襲ってくる。
「……?
……ちょっと、どうしたの?
しっかりして……!」
───大丈夫だ。
わたしは多分、死なない。
幼いころからずっと、
探していた答を、
今、
与えて貰ったような気がするから。
少し、君の腕の中で休んだら、
またこの大地に二本足で立とう。
わたしたちは、
出逢うべくして、
出逢ったのかもしれない───
†
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