パロディ
□『桜舞う夜』
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煌々と照る月夜。
肌をかすめる夜風は冷たく、木々をざわりと音立たせ、咲き誇る桜を宙に舞わせた。
待ち人はもうすぐ…
【桜舞う夜】
幾つもの大木が立ち並ぶその内の一つに背中を預け、月明かりの中ひらひらと舞う桜を眺める男がいた。
「…こんな所におられたのですか?アスラン様」
自然が起こす静かな音だけが囁く中、男にとって最も心地好いそれが耳に届いた。
その声の端々に怒りや呆れの色があから様に含まれていたが、男は動じる事も無くその声の持ち主に視線を移し心底満足気に微笑んだ。
「カガリ…」
愛しげに名を呼べば、眉間に皺を寄せていた彼女の表情が微かに和らぐ。
だがそれも束の間。彼女は瞬時に顔を引き締め冷ややかな声を落とす。
「ご自身の立場をご理解なされていますか?」
そう言葉を紡いで、彼女は背を預けていた塀から身を離しゆっくりな歩調で男に近付く。
男の名はアスラン・ザラ。
この国の若き王だった。
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