パロディ
□『恋心』
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助けを求めるように、一心にこちらを見つめてくるカガリにどぎまぎと胸が騒ぐ。
落ち着かない心臓を無理矢理に諌めながら、アスランはカガリに頷いた。
「う、うん。栄養も偏るし、好き嫌いは駄目だと思うよ?」
「だよな!えいよーがかたよるもんな!」
パアッとお日様のように明るくなって頷く少女にアスランは思わず頬を染めた。
「アスランをみかたにつけるなんてズリーぞ!」
「うるさーい!」
「アスハのほうがうるさいっつーの!そんなにいうなら、アスハもニンジンたくさんくえよな!」
またもや二人の言い争いが始まったかと思いきや。
ビシッと、スパゲティに所々顔を出している人参に指を差してシンが反撃に出た。
「あ、あったりまえだろ!そんなのシンにいわれなくても、はじめからたべるつもりだったぞ!」
「いったな!?ゼーッタイくえよ!くわなかったらこんどからアスハのナマエは“ウソつきアスハ”だからな!」
「のぞむところだ!そのかわり、オマエもちゃんとピーマンたべろよな!」
ようやく決着が付いたのか、二人がツンと顔を背け、長いこと続いていた喧騒が終わりを迎えた。
それから三十分後……
とっくに給食の時間は過ぎ去って、時はもう昼休みと言うのに、二人だけがフォークを片手に唸り声を上げていた。
最初こそ、面白がって二人の行く末を見学していたクラスメイト達だったが、飽きたと言わんばかりにそれぞれの昼休みを満喫している。
未だ続く決闘。
右隣にはシン。
左隣にはカガリ。
丁度この二人に挟まれるような形にあるアスランの席は、ピリピリと漂う雰囲気に当てられていた。
「うっがーー!!もう、むりだ!こんなんくえねーよ。オレもうやーめた」
先に根を上げたのはシンの方だった。
頭を掻きむしりながら声を張り上げたシンがトレーを手に持ち、立ち上がる。
それを見たカガリも、すかさず立ち上がると大声を出して叫んだ。
「なっ!ルールいはんだぞ!」
「そんなのしるか!オレはアウルたちとサッカーするんだ!」
ふん、と鼻を鳴らして給食室に向かうシンに、カガリは憤慨しながらもストンと席に座った。
ぶつくさと文句を言いながらも、自分の告げた事をきちんと守るべく、カガリはフォークに突き刺した人参と再びの睨めっこを始める。
そんなカガリにアスランは持っていた本を閉じて、左隣でうんうん唸るカガリに声を掛けた。
「食べれそう?」
覗き込むように問えば、問われた少女はぱちくりと瞳を瞬かせた後、にっこりと笑った。
「うん!たべるぞ!やくそくはきちんとまもらなきゃだもんな!それに、えいよーがかたよったらたいへんだ」
えっへんと、にこやかに胸を張るカガリに、つられてアスランも笑みを浮かばせる。
「うん。えらいな、カガリは」
「えへへ。あとはもうこれひとつだけなんだ!…でも、なんかこれおおきくてさ…」
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