本編沿い
□『眠り姫』
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【眠り姫】
トントン
「カガリ…入るぞ?」
声を一声掛けドアノブを回し、室内に入るアスラン。
「カガリ、さっきキサカさんが……………………ってあれ?」
数枚の書類に目を通しながら、事務的な言葉を紡ごうとしたアスラン。だが視線を書類から離し顔を上げると……
窓から差し込む光に照らされ寝息をたてる愛しい人の姿。
「寝てたのか…それにしても…鍵も掛けずに眠るなんて…無防備にも程があるぞ…ったく」
書類をデスクの端に置き、カガリの元へ近付き溜息混じりに一人呟くと、椅子から少し落ちかけていたカガリの体を抱き上げソファまで足を進めその上に沈めた。
「……ん……」
小さな可愛いらしい声が漏れた。アスランは空いているスペースに腰を下ろし、優しく微笑みながらカガリの金の髪に触れる。
「…ん…ァ……ら…」
それに僅かにピクリと反応を示したカガリだが瞳は閉じたまま。だが小さく口を開きふにゃりと笑んだ。
「……ァスラ………」
夢の世界に身を置きながら、無邪気な笑みを讃え自分の名を紡ぐカガリにアスランは思わず顔を真っ赤にする。
そしてなんとも幸せそうに頬を緩ませ、今さっき熱をもったばかりの顔をカガリの額に寄せ、そっと口付けた。
ちょこんと僅かに額に触れゆっくりと唇を離す。先程よりも頬を染めたアスランが眠る少女をチラッと見ると、カガリが更にふにゃ〜と笑みを漏らしていた。
あどけない笑み。
アスランもつられて柔らかい笑みを漏らした。
そしてまた、優しく慈しむように髪を撫でその幸せなひと時をアスランは味わいながら、眠り姫が目覚め綺麗な瞳を自分に向けてくれるのを静かに待った。
‐end‐