本編沿い

□『眠り姫の王子様』
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ドキドキと心臓の音が煩い。当然だろう。目の前の愛しい人は、自分を抱き締め眠っているのだから。



鳴り止まぬ鼓動をまずは落ち着かせようと、カガリは一つ小さく息を吐いた。
僅かに余裕を手に入れ、ホッとしながら、もう一度眠りに就いている彼を見つめた。



綺麗…。
窓から射し込む橙色の光を浴びて眠る彼の寝顔に、思わずそんな言葉が頭に浮かびカガリは感嘆の溜息を零した。



半ば無意識に手が伸び、柔らかなサラサラとした髪に触れ、指に絡める。
起こしてしまわぬように極力気遣いながらそぉっと指先を滑らせたりと、それを何度か繰り返し行う。



ずっとそれを続けているのに全く反応が無い。
その事に安堵はするものの少し面白くないと感じる自分がいた。



自然と行為はエスカレートする。カガリは指を髪から離し、彼の滑らかな頬に指先でちょんとつっついた。



だがやはり反応は無い。
決して起こしたいわけではないのだが、こうまで何の反応もないとなると、少しムキになってしまう…。



カガリは更にツンツンと頬をつっついた。
すると漸くそれに反応を示し僅かに彼が身じろぎをした。



「わっ!?」



起こしてしまったか?と、ドキリとするカガリ。だが目覚めたわけではないらしい。
これ以上気持ち良く寝ている彼に悪戯を続けるのは躊躇われるし、一応の目的は達成出来たのでカガリは大人しく彼の腕の中に納まっておく事に決めた。





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