本編沿い

□『わがまま』
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「…ん……」

閉め切ったカーテンの隙間から光が漏れ、カガリは瞼を持ち上げると眩しさで少しく目を細めた。

「…何時、だ…?」

モゾモゾとベッドの中で身を捩り、時計に視線をやると、まだ朝の5時頃。

「…………」

早くに目が覚めすぎた。
けれどもどうしてだか、目が冴えすぎて今からまた眠りに就くことが出来そうにない。
書類にでも目を通そうか…
そう思って起き上がろうと体を持ち上げると、

「何処に行くんだ…?」

クイッと腕を捕まれ、それは叶わなかった。
まだ眠たそうな、それでいて何処か不安気な声の方に視線を向けると、視界に映るのは世界でたった一人の愛しい人。
カガリは優しく笑みを浮かばせると、隣で横になったまま自分を見上げるその人の藍の髪を指先に絡めた。

「ん。目が覚めたから。今の内に書類に目を通して置こうかなって…」

そう言って、柔らかい髪から指先を離すと、再度起き上がろうと体を支える腕に力を込めた。
だがしかし、それはまたもや失敗に終わる。

「駄目」

身を起こそうと浮かせた体は、一言の呟きが聞こえたと同時に、真逆の力によって再びベッドに沈まされてしまった。
トサリと小さく音を立たせて、カガリは彼に押し倒される。
思わぬ彼の行動にカガリが瞳をぱちくりと瞬かせ、覆い被さる彼の顔をゆっくりと見上げた。

「どうしたんだ?」

両の手首を捕まれ身動きが取れない為、視線だけを真っ直ぐと彼に向ける。

「そんなの…今しなくても良い事だろう…?」

「そうだけど…」

「じゃあ、時間まで一緒に……ね?」

懇願するように言葉を紡がれれば、カガリはどうしようもない。
それにカガリ自身も、望んでいる事なのだから。

「うん…」

自分だけに奏でる彼の甘えた声音と、彼の可愛い我儘に愛しさを全身で感じながらカガリは彼の下で小さく頷いた。
途端にとろけるように笑みを浮かばせる彼は、ゆるりとカガリの首筋に唇を寄せ、囁く。

「カガリ、いい?」

「んっ……」

首筋に彼の吐息が掛かり。
また、柔らかな藍の髪が肌を擽りカガリの口からは溜め息が漏れた。
首筋に意識が集中している為、カガリは彼の問いに答えられず。
代わりに自分の肌に唇を滑らせていく彼の首に腕を回す事で肯定を示した。





-fin-
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