運命

□序章
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「幻滅だね…」
 
僕の足下には赤い赤い血の池
 
目の前には人間だった肉塊
 
「こんなのが今まで脅威だったなんてね…
 
いったい何に怯えてたんだか
 
でも、もう貴方たちは死んだ
 
僕の脅威には成り得ない」
 
ただの肉塊と化した今まで両親と呼んでいたモノを僕は見下ろしている
 
《こちらに来ますか?》
 
不意に聞こえた声
 
「誰だ!?」
 
今までの職業柄なのか咄嗟に構える
 
けど、近くに気配は無い
 
声だけが頭に直接響いてくるような感じだ
 
《世界に幻滅したのでしょう?
 
ならば貴女の望む世界を作りませんか?》
 
「僕が望む世界?
 
そんなもの在りはしないよ」
 
望む世界なんて無い
 "彼"が死んでしまっているのに世界に生き続ける意味なんてない
 
《貴女の望む世界では貴女が望むものだけが存在する
 
誰も貴女を残して逝ったりはしない
 
誰も貴女を罵ることもない
 
理想の世界ではないですか?》
 
「そんな世界なんてヘドが出るよ」
 
《では、貴女が望むものとは?》
 
「そうだね…
 
此処じゃない…違う世界に行くことかな
 
生きる価値も見出だせないこんな世界なんかじゃなく」
 
《ならばこちらに来ますか?
 
貴女の世界ではないこちらに》
 
「行ってあげてもいいけど、君の思うようには動かないよ」
 
《それでも今は構いませんよ
 
いずれ私の頼みを聞いてくれるのであれば》
 
声の主はわからない
 
でも聞き覚えはある
 
実在するはずのない人物
 
人間が作り出した空想の世界の産物
 
現在なら当たり前のように存在するゲームの中の人物
 
そう
 
この声の主は…
 
「フォルトゥナ」
 
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