夢T
□睡魔
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草木も眠る丑三つ時。
外では野良猫共が縄張り争いをやっているのかぎゃあぎゃあにゃあにゃあとうるさい。
せっかくの休みなのにこれじゃいつまでたっても眠れないではないか、いっそ明日は野良猫退治から始めようか。
「……×××、まだ起きてますか?」
きぃ、と音がして聞き慣れたテノールが小さく囁く。
体を起こして入口を見れば、枕を抱いた骸の姿がある。近付いてくる彼の目は、うるうると涙が溢れていた。
「どうしたの?何か、」
「×××っ!」
「むく……?!」
「っ……う、ダメです!×××は僕のものです、絶対に誰にもわたしませんっ!」
趣旨が曖昧なまま突然泣き付く骸に一体何があったんだと不安になる。
……いや、骸がここまで落ち込む事なんて一つしか無いじゃないか。あいつだ。あのトリ野郎、一体骸に何を吹き込んだんだ。全くナイーブな人間は傷付き易いんだと何回教えればわかってくれるんだ。
一発殴りに行ってやろうと思ったけれどぐずぐずと情けなく涙を流しながらも必死に私の体に抱き付いてきて、行かないで下さい、離れないで、と切なく懇願されてしまえば抱き締め返してやるまで彼は絶対に落ち着かない。
「……×××。……ちゅう、してくれませんか?」
「!」
「×××──…、」
「むくっ、………ん、」
「好き、好きです、愛してます×××っ!どこにも行かないで……!」
上目で見上げていた顔が近付いた途端、かぷりと唇を捕らわれた。ちゅ、ちゅと啄むように口付けて好きだと言うけれど、それでもなお彼は寂しそうに眉を寄せる。
本当に一体何があったんだ?
「骸、むくろ、泣かなくても大丈夫だからね?私が側に居る、骸の側に。だから、今日はもう休もう?」
「……っ、眠るのが、怖いんです!×××が、消えてしまうんじゃないかって!」
「消えないよ?骸が寝ても寂しくないように私はずっと起きてるから、ね?」
「……僕が起きた時、×××は側に居てくれますか?」
「うん」
だから、眠ろう?そう言って目尻にキスを落としてやる。くすぐったそうにはにかんだ骸はようやく落ち着いたのか、ふぅっと息を吐くと大人しく目を瞑った。
しばらくするとすうすう、と小さな寝息が聞こえてきて寄せられていた眉間のシワも消え失せていた。
「ん、……愛してます、×××……、」
end
(どうしたの×××?顔色悪いよ?)(寝てない、から。不眠10日目……、)(×××、休みあげるから寝て!)(……今更眠くないよボス)(Σ……!)
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