夢T
□君から離れられない僕の困った癖
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「じゃあコレ頼むね」
「はい!」
それはたった一週間の出来事だった。
そしてヤツとは二度と会いたくないと全力で思った。
「×××チャーン♪」
「───ふぎゃっ?!」
「ふにふにー♪」
背中に衝撃を受けて苛立つ間もなく後ろから抱き締められて小動物とじゃれ合うかのようにうりうりと擦り寄られる。
ふにふに、じゃねぇよセクハラ上司め、任された仕事が出来ないじゃないか。
鬱陶しいとは思いつつも、もう七日も続くこの掛け合いに慣れはじめていた。
「今日も相変わらずぷにぷにしてるよね、マシマロみたいで抱き心地抜群♪」
「それ絶対太ってるって言ってるよね!」
「いやだなぁ×××チャン♪誉めてるんだよ」
「誉め言葉じゃない!」
こんな会話がよく続くモノだとつくづく思う。
聞いた話だから意味はあまりわからないが、何でも十年バズーカで私はこの時代に喚ばれたらしい。
当初の説明通り五分で帰れる筈が、バズーカが故障していたらしく、未だ過去に帰れずじまいだ。
「白蘭さん離れて下さい」
「ヤだ♪」
「 退 け 変 態 !」
「えぇー?大丈夫だよ?セクハラは×××チャンだけにしかしてないから」
「………はぁ?!」
抱き締める力が僅かに緩んだ隙に抜け出そうと試みたが呆気なく失敗、今度は正面から抱き締められる形になってしまった。
まじまじと顔を合わせるなんて、恥ずかし過ぎる。
ぶっちゃけ男に免疫がない私としては背中がおぞおぞしてたまらないのだ。
そんな私の心情をわかっているかのように白蘭はポツリと言葉を漏らす。
「だってさぁ、この時代の×××チャンいないしー、かと言って娼婦とかいらないしさー、」
「し、娼婦……、」
なんてヤローだ、と心の中で愚痴って眉を寄せる。
いや、だってホラ。なんつーか、嫌悪感?
湧く、よね?だって娼婦だよ?んなフレーズ出されたらさぁ……、
「それより僕は十年前の×××チャンをぎゅーってしていたいな?」
「ぬかすな!もうしてんじゃねぇかよ!!」
「だからだよー♪」
だから、ずっとこうしててもいいよね?目を細めて彼は私に笑いかける。
整った白蘭の顔が近くにあって、頬っぺたが赤くなってしまうのがわかった。
「……びゃくら、」
───ぼふん!!
白い煙が辺りを包んで、それが晴れる頃にはもう、今までいた場所に彼女の姿はなくて。
「んー、残念。惜しかったのに、時間切れかぁ…、」
じんわり温もりの残る腕を片手で握り締めて、ガラにもなく苦笑して。
そのまま一度窓際に足を向け、自室から伺える空模様に目を向けた。
「可愛かったなー、十年前の×××チャン…。あーあ、キミの為の選択肢なんて、みんな無くなっちゃえばいいのにね?」
クスクスと笑いを浮かべてソファーに腰を降ろした僕の前には、入れ違いで戻ってきた今のキミの姿。
「お帰り×××。どうだった十年前は?」
「楽しかったよー?丁度この時の事を思い出して十年前の白蘭の首を何度絞めそうになった事か」
「はは♪×××らしいや」
「もー、笑い事じゃないよ白蘭。あの頃の私にとっては一大事だった」
ぽふぽふと頭を撫でてやると彼女は頬を膨らましてぺちんと僕の手を叩いた。
十年前の彼女なら裏拳が飛んで来ただろうに、この懐柔っぷりを見たらきっと『ない!絶対ねーわ!』って言うんだろうなぁ。
「びゃっくん?」
「……いひゃい」
そんな風に思いを巡らせていれば、聞いているのかと今度は頬を摘まれて引っ張られる。
痛い、なんて言ってはみたけど、実際力は込められていなくてさして痛みはなかった。
「結論から言うとだねびゃっくん、一週間はちょっと長すぎ。充電切れだよ」
「ん、いいよ。おいで?」
はふ、と物憂げにため息を吐く×××に向けて両腕を広げてやれば、彼女は躊躇いなくそこにダイブしてくれて。
「白蘭、大好きー!」
ぎゅーっと抱き締めてくれる×××の温もりを感じながら、ああ、やっぱりこっちの方が幸せだなーなんて。
「ふふ♪僕は×××を愛してるよ」
×××に負けないようにぎゅっと彼女を抱き締めて、僕の腕の中で赤面する彼女の姿に終始笑みが止まらなかった。
End
(これだから、キミに触れるのをやめられない)
(ふふ!×××チャン顔真っ赤ー♪)(うるせー!裏拳見舞うぞ!)
一方、十年前
(帰って来て三日目にしてこれはねーわ!なんでミニ白蘭が居る?!ここ日本だよね?!)(……ん?)(やっべ、知らないフリ知らないフリ!)(あれってもしかして×××……?)
提出
神様補完計画。
君から離れられない僕の悪い癖。
それはキミも同じだよね?
10/08 一部改正
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