夢T
□不鮮明
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世界は無慈悲。
マフィア、ミルフィオーレファミリーのボスに休日など有りはしない。書類に追われ、気分次第で弱小マフィアを壊滅させ、頭の堅い部下に小言を言われ、結構それでも仕事をしない彼に休息を与える必要は無いのである。
だが、それにもかかわらず彼はぬいぐるみだらけのオレの部屋にやってきて、いつの間にか豪勢に寛ぎ始めているのだ。
オレのテリトリーがボスの憩いの場所(もといサボり部屋)になるなんて癪に触ってならない。
只でさえボスの為のお菓子増えて甘ったるい匂いが消えなくて困ってるって言うのに。
ヤツはオレのぬいぐるみ抱き潰すし、お菓子のクズを零すし、そもそもオレの大ッ嫌いな甘ったるいもの好むし、匂いは移るし、ぬいぐるみ達が哀れだ。
極め付けに言うなれば、これは現在進行形の話であって、目の前で今日もまたオレの相棒はボスの腕の中でめしょめしょに(なるまで)抱きつぶされてしまっている。
「……なーぁ。びゃくー、もうそれ返してー、オレの相棒」
「んー、あともう少ししたら返してあげるよ。それより×××、女の子が"オレ"とか言っちゃダメ。ブルーベルみたく脚を広げないだけマシかも知れないけどお行儀悪いからね?」
ニコニコしながらそう言って、びゃくらんはオレの相棒をぎゅぅぎゅぅと抱き締める。マフィアのドンがぬいぐるみ抱き締めてリラックスしている光景はとてもシュールだ。
そして、それがびゃくらんだから憎たらしい。
ん……?
ちょっと待て?今このボス何ていった?
ブルーベルみたく脚を広げる?
脚を、広げ……る?
「……っな。うわー、さいてー。この変態!」
「別に見たくて見たわけじゃないよ。それに相手はブルーベルだから別に何も感じないし」
「うわうわー、それはそれでさいてー。この***」
「うーん。×××ってそんな事言うキャラだっけ?」
「オレ様は相棒の効力のおかげでちゃんとしたレディでいられるんですよー」
はっはーん、なんてふざけた口調てぬいぐるみまみれのベッドでごろごろ。びゃくらんはオレの相棒の耳を片っ方掴んでまじまじとそれを眺めている。
あーあー、ちょっとちょっと、オレのココナちゃんが傷むじゃんか。
びゃくらんにぞんざいに扱われた上に視姦されるなんて超、さいあくー。
「………本格的に壊れて来たねー×××?一度黙っとく?」
「あー、読心術はソーテー外です。禁止事項の第一項目使用ですよ卑怯者。まぁそんなのオレの知ったこっちゃないけど。だからほらココナ返せー」
「………ぷ、」
ココナとは違う兎のぬいぐるみを白蘭の顔面に放ってやる。
黒い兎のぬいぐるみは、白い彼によく栄えた。
「ふいー、×××サマふっかぁーつ。あ、黒い兎はエニルくんだぜ?丁重に扱えよー白蘭」
彼の手から離れたココナを能力で操って自分の肩に乗せた。白い兎がぺしょんと肩に乗った感じがして、一気に目が醒めたような不思議な感覚に襲われる。
能力に対する代価がこれなのか、それこそ彼の覗き見と同じ様に。
「×××=ココナ様の瞑想結果知りたい?」
「──ウン。聞かせて?」
待ってました、と彼は笑んで側にあった器からマシマロを一つとり口に含む。
彼もまた持つ瞑想の自信からか、それとも他に理由でもあるのか。この後どの選択肢を選んでも彼は、
「ぶっぶー!残念でした!この世界はエンドレスループでハーズレっ!!」
その笑みを崩さないんだ。
end
不鮮明
(実はもう、私に世界を見る力はない)
(だって私の世界は崩壊したから)
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