夢T
□ロマンですから
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「やべ、首筋萌える!」
「………どこのオヤジですか貴女は」
「いやー!今回ばかりはボスに感謝するね!お祭り最高!浴衣最高ッ!んっふっふー!」
「………はぁ、」
何故僕はこんな会話をして、いいえ、出来ているのでしょうか、不思議でなりません。
変態オヤジ然り、彼女はコレでも十代です。
なのになんだ、口から出る言葉と言えば生足、首筋、鎖骨萌え。
挙げ句の果てには、「やべぇ、あの子脱がしてぇ」なんて言い出す始末。電車ですら女性専用車両が出回る時代、コレが本当に女性でいいんでしょうかね?
「生足ーッ!」
………ダメだ。コレはもはや女性ではありません。
そんな自問自答を繰り返しつつも答えは固定されている。
激しく否定するしか、出来ない。
「なーなー、むくー。ドクロちゃん俺の嫁にくれ」
「イヤですあげません」
「何でぇ?」
「貴女の様な変態に僕の可愛いクロームを汚染されてたまりますか」
「えー?ケチー。じゃあ骸でいいから女装しろ。今すぐ。衣裳は浴衣ね、つか私とチェンジ!そうと決めたら即コードーってね!行くぜ!」
「……なっ!何ですかいきなり?!こら×××!帯をひっぱる、───っ!!」
「どぅわっ?!」
ぐん、と引っ張られて傾いた僕。
帯を引っ張る×××が段差に躓いたのだ。
咄嗟の事に驚いたのか受け身を取ろうとしない×××の身体を片手で引き寄せて抱き抱える。が、結局あまりにも咄嗟過ぎてバランスをうまくとれるはずも無く、×××を抱き抱えたまま不様に地面と激突してしまった。
強打した背中に痛みがじんわりと広がっていく。
「っ────、」
「む、むくっ?!」
「……だ、いじょうぶですから、耳元で叫ばないで下さい」
「ホントに?怪我は?骨折してない?頭は?ぶつけない?」
「大丈夫、です」
先程とは打って変わって大人しくなった×××。
自分に非があると理解してきるからか、随分しおらしくなっている。
全く、普段からこうあれば可愛いものを。
「ご……ごめん、骸」
とりあえず、と起き上がろうとした×××をそのまま抱き締めて拘束。
人気の少ない境内裏からお祭り会場を眺めていて正解だったなと口元が緩む。
「む、むくろ?」
「×××は僕のモノです」
「は………?」
「クロームではなく僕を選びなさい、×××」
「……っ、」
────ぎゅう。
なんて、心臓を鷲掴みされた気分だ。
耳元に唇を寄せられて、普段より低い声で囁やかれて染まる頬に狼狽える。
この野郎、私が声フェチと知ってやりやがったな。
私のペースを崩されるのは不快だが、それすら気にしていられない。上手く表現できないけれど表現するなら何かを誤魔化す為に叫びたくなるような感覚。
だってだってだって、骸に抱き締められて、綺麗な首筋が目の前にあって、それでもう、あー……。
ああ、もう、
「鎖骨萌えーっ!」
叫んでやれ。
ロマンですから!
end
(っ〜!また貴女はっ!少しは空気を読め!)(ふふふふふ!首筋、鎖骨、浴衣ぁ〜♪)(ひっ?!ちょ!×××!ヤラシイ手つきで腰を撫でないで下さい!!)