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□胸に秘めたもの
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「シングルスの戦いをします。負けた方は脱落、という事で…」



コーチのその言葉に、頭が真っ白になった。


俺達は今まで黄金ペアとして一緒に頑張ってきて、この合宿でまたダブルス組めるってわかって、嬉しくて…


だから、


『6-2、菊丸リード!!』


俺は


『ダブルフォルト6-3!!』


わざとミスをした。



だって俺は、大石とダブルスをするつもりできたのに、どちらかが脱落なんてできない…


そう、思ってたのに。



「…ふざけるな英二!!」



大石は、そんな俺を怒った。


情けをかけられて格好悪い、そんなことをする俺に絶対負けたくないって。


俺達は、ペアだ。

ダブルスのペアで、"相棒"だ。


大石…俺が間違ってたよ。

相棒だからこそ、真剣にプレイするんだよね。


俺、いつか大石を超えてやるって言ったよね。


今がその時だと思うんだ、俺。


「…来い、"相棒"!!」


俺の言葉に、大石は小さく笑った。



『ゲームウォンバイ、菊丸7-4!!』


俺が、勝った。



嬉しいけど、悲しくて、悔しい気持ちが胸の中で渦巻いている。


だけど



「それ持って、絶対残ってやるもんね!!」


いつも一緒に戦ってるから。

大石の分を、俺が頑張るよ。



「頼むぞ……英二」


俺に向かって投げられたラケットをキャッチして、俺は大石に拳を突き出した。


「……もち!」


大石も拳を突き出し、頷いた。

そして、笑い合った。



新たな誓いを胸に秘めて。



*end*
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