blue

□色彩
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踏みしめた落ち葉が渇いた音を立てる。

ふと空を見上げると、そこには秋の透き通った青空が広がっていた。

視界にひらり、と黄色い葉が入った。
黄色い葉はひらひらと舞い、足元に着地した。

その葉を拾いあげ、しげしげと見つめた。


(もう秋か…)


周りを見渡すと、閑散とした公園の木々は、うっすらと色付き始めていた。


(もう、秋なんだな…)


秋というのは、何だか淋しくなる季節だと思う。

人肌が恋しいというか、虚しいというか…何かが物足りないのだ。

俺が思うにその原因は、自然によるものだと思っている。

固い緑の葉が赤や黄、茶に染まり、はらはらと地面に落ちる。その枝から葉がなくなっていく様子が、俺を何とも言えない気持ちにさせるのだ。

そして、失っていく自然たちを見ていると、自分の中でも何かが失われていくのではないかという気にさせられる。

それは自分のただの勘違いなのかもしれないのだが、一人だと考えずにはいられないのだ。


いつの間にか体が強張っていたことに気づき、ゆっくり息を吐いた。

どうも一人だと気が弱くなる。

手の中の黄色い葉に視線を落とす。

黄色い葉は何も言わず、そこに収まっていた。


(お前は、どう思う?)


「………」


問いかけても返事など返ってくるはずもない。


「………」


(枝から離れて、淋しいと思わないのか?)


「………」


黄色い葉は何も言わない。


(なぁ、応えてくれ)


「………」


ただ、黙って俺を見つめている。


(……)


何だかただの葉に問いかけている自分が恥ずかしくなった。


(おかしいな俺…)


「…ねぇ」

「…えっ?わっ?!」

葉が喋ったと思ったら、突然視界が真っ暗になった。

いきなりのことに頭の中がパニックになる。

「だぁーれだ!!」

聞き慣れた声がした。

「…英二?」

「正解!!」

ぱっと視界が明るくなった。振り向くと英二が立っていた。

「大石何してんの?」

「いや、ちょっとね」

「葉っぱ?」

英二は俺の手の中にある黄色い葉を見て言った。

「ああ。綺麗だなぁって」

「あっは!!何大石ってばおっとめ〜」

「そ、そんなつもりじゃないよ!!」

英二は可笑しそうに笑っている。

「でも綺麗だけどね」

英二は俺の手からひょいと葉を摘み上げると、じっと見つめ始めた。

「秋っていいね」

「ああ…でも何か淋しくならないか?」

「確かにそうだなぁ。でもさ俺、秋って好きだよ」

「何で?」

「だってさ、」


ふわりと風が吹いた。

色づいた葉達が一斉に宙を舞った。

英二が指を開くと、捕らわれていた黄色い葉も、秋の風にさらわれていった。


「綺麗だからさ!!」


と、笑った。

鮮やかで綺麗な葉の雨の中にいるのに、その綺麗さに負けていないくらい綺麗に見えた。


そして、小さなことで悶々と考えていた自分がどうでもよくなった。


「行こ、大石!!」

英二は手を俺に差し出した。

「…ああ、行こうか」


俺はその手をしっかり握った。


秋は何かを失ってしまいそうな季節だけれど、


同時に何かを得る"失う"なんだと、


そう思えた。




(秋、大石は好き?)

(俺も好きだよ、英二)




*end*

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