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□勉強の理由
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「x=5とy=−2を3ax−2bx=29に代入するだろ?」

「…うん」


テスト一週間前の放課後。俺は大石と教室に二人きり。

俺の目の前には大石がいる。

少し目を伏せた顔は整っていて、後輩に人気があるのも頷ける。
かっこよくて性格が良いなんてもてて当たり前だよな。


「…で、数を合わせなきゃいけないから…って英二?聞いてるか?」

下を向いていた大石が顔を上げた。

「んー…」

やっぱかっこいいなぁ。

「…俺の顔に何かついてる?」

「別にぃー?」

大石をじっと見つめる。

「…恥ずかしいんだけど」

「…大石ってさぁ」

「ん?」

「かっこいーよね」

大石は少し驚いた顔をして、困ったように笑った。

「かっこよくないよ」

「いんや!髪型があれじゃなければ完璧だよ!!あとお人好しじゃなければ」

身を乗り出して言ったら、何だそれ、と苦笑いしていた。

「英二の方がよっぽど顔良いし、可愛いよ」

「可愛いかよ…」

可愛いって、男に言う言葉じゃないじゃん。

「うん、可愛い」

そんなに優しい目で言われたら、悪い気がしないじゃんか。

「……可愛くないし」

かあっと熱くなる顔を誤魔化す為に悪態をつく。本当は、すごく嬉しいんだけどさ。

俺の気持ちに気付いているのか、クスッと笑う大石。

「英二、休憩しようか」

「えっまじ?!」

「ちょっとだけね」

「…やったぁー」

机の上にぐだーっと寝た。

「英二」

「ん?」

顔を上げると、大石のドアップがあった。大石は俺の顎を少し上げると、自分の唇を俺の唇に押し付けた。

すぐに唇が離れたが、俺の心臓はバクバクしていた。

「…おお、いし…」

「じゃあ、休憩終わり!!」

「えっ?はぁ?!!」

爽やかな笑顔で進めんなよ!

「な、ななにしてんだよ?!ここ学校だぞ…!!」

ああもう俺多分顔真っ赤だ。俺かっこわりぃ…。

「ん?充電」

何だよそれ!!

「ほら英二!続きやるぞ」

「〜〜〜っ!!」

「あれ?顔赤いぞ?」

大石のせいじゃん!!

睨んだけど、大石はにやにやしていた。

ふいに顔を近づけて、一言。

「テストで良い点採ったら、"ご褒美"あげるよ」

"ご褒美"って…

「がんばり、ます…」

小さく呟いて俺はシャーペンを握りなおした。

大石はそんな俺を見てふふ、と笑った。

「それでは頑張りましょう!!」

「…ん」


"ご褒美"が貰えるように、絶対良い点採ってやんだからな!!




*end*

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