blue
□勉強の理由
1ページ/2ページ
「x=5とy=−2を3ax−2bx=29に代入するだろ?」
「…うん」
テスト一週間前の放課後。俺は大石と教室に二人きり。
俺の目の前には大石がいる。
少し目を伏せた顔は整っていて、後輩に人気があるのも頷ける。
かっこよくて性格が良いなんてもてて当たり前だよな。
「…で、数を合わせなきゃいけないから…って英二?聞いてるか?」
下を向いていた大石が顔を上げた。
「んー…」
やっぱかっこいいなぁ。
「…俺の顔に何かついてる?」
「別にぃー?」
大石をじっと見つめる。
「…恥ずかしいんだけど」
「…大石ってさぁ」
「ん?」
「かっこいーよね」
大石は少し驚いた顔をして、困ったように笑った。
「かっこよくないよ」
「いんや!髪型があれじゃなければ完璧だよ!!あとお人好しじゃなければ」
身を乗り出して言ったら、何だそれ、と苦笑いしていた。
「英二の方がよっぽど顔良いし、可愛いよ」
「可愛いかよ…」
可愛いって、男に言う言葉じゃないじゃん。
「うん、可愛い」
そんなに優しい目で言われたら、悪い気がしないじゃんか。
「……可愛くないし」
かあっと熱くなる顔を誤魔化す為に悪態をつく。本当は、すごく嬉しいんだけどさ。
俺の気持ちに気付いているのか、クスッと笑う大石。
「英二、休憩しようか」
「えっまじ?!」
「ちょっとだけね」
「…やったぁー」
机の上にぐだーっと寝た。
「英二」
「ん?」
顔を上げると、大石のドアップがあった。大石は俺の顎を少し上げると、自分の唇を俺の唇に押し付けた。
すぐに唇が離れたが、俺の心臓はバクバクしていた。
「…おお、いし…」
「じゃあ、休憩終わり!!」
「えっ?はぁ?!!」
爽やかな笑顔で進めんなよ!
「な、ななにしてんだよ?!ここ学校だぞ…!!」
ああもう俺多分顔真っ赤だ。俺かっこわりぃ…。
「ん?充電」
何だよそれ!!
「ほら英二!続きやるぞ」
「〜〜〜っ!!」
「あれ?顔赤いぞ?」
大石のせいじゃん!!
睨んだけど、大石はにやにやしていた。
ふいに顔を近づけて、一言。
「テストで良い点採ったら、"ご褒美"あげるよ」
"ご褒美"って…
「がんばり、ます…」
小さく呟いて俺はシャーペンを握りなおした。
大石はそんな俺を見てふふ、と笑った。
「それでは頑張りましょう!!」
「…ん」
"ご褒美"が貰えるように、絶対良い点採ってやんだからな!!
*end*
.