リク等

□クインテット 様のキリリク
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「銀時は焦っていた。」

「銀さん、その語り口調、恥ずかしくないですか?」

冷たいようで、実は熱い視線を向ける新八に、ニカッと笑って、とりあえず続けようと思う。

何が焦ってるって?決まってんだろうがっ!
この状況にだっ!!!


その前に、俺の話を聞け!!


+こんな日は鍋だね!+



俺と新八は仲むつまじい万事屋の夫婦である。
新八は照れて、なかなか認めようとしないが、
一人娘と愛犬に囲まれた、この家族は幸せに満ちていた。

まぁ、義理の姉にあたるお妙のいびりもあったけれど、
それはそれは幸せだった。

新八は、若いながらも主婦の見本のような素晴らしい伴侶で、
少ないお給金の俺を陰ながら支えてくれる。
娘にも飼い犬にも愛情を注ぎ、一家を暖かく包み込んでくれる。

昼間は良妻賢母。
そして、夜は・・・ぶふぅっ!!

「銀さん、アンタの妄想はもう結構なんで、さっさと進めてください」

「ちょ、新八!鼻もげらっ!」



※※※数時間前※※※

俺は機嫌良くスクーターを走らせる。
夕飯の買い物に出た新八を迎えに行くためだ。

そして、新八は感激のあまりに俺に「今夜はめちゃくちゃにして」とか言うんだ!
そうに違いない!とう確信を持ち、いつものスーパーに到着。

するとどうだろう。
そのスーパー前には見たくも無い車一台。
真選組と書いてバカと読む奴らの車。

俺の新八の貞操の危機に、俺は慌ててスーパーに飛び込んだ!

黒ずくめの男達を、目を血眼にして探す。

「いない?そんなバカなっ!!」

こんなにも必死にお菓子売り場で探してるのに、見つからず、
車の前で張り込みをしようと、板チョコを数枚購入して、スーパーを出た。
すると、そこには車がすでになかった・・・。


このあまりの奴らの早業に、俺は目からしょっぱい液体を流すしかなく、
仕方なくスクーターにまたがり、我が家に帰宅した。


しかし、そこはもぬけの空だった・・・。

俺の家族にまで手を出した、黒ずくめの男達に復讐を誓い、俺は吼えた。
すると、下のババアがうるさいなどと殴りこんでくる。

しかし、俺のあまりもの怒り狂った様に、立ちすくんでいる。

「銀時、アンタとりあえず顔洗ってきな。涙と鼻水で汚いよ」

俺に恐れをなしたババアは、奴らの行き先を教えてくれた。


そして、ようやくたどり着いたのは、新八の家だった。


てめぇらぁぁぁーっっっ!!!俺の新八を返しやがれぇぇぇっ!!!

そんな気分でカッコよく乗り込む。

「お邪魔しマース」

すると、新八が割烹着姿で出迎えてくれた。


「うん、可愛いよ。お前にはそれが似合う!」

「銀さん、意味がわかりません」

にっこりと微笑む新八を見れて、俺は幸せだった。


ここまでは。


案内されて大広間に通された。
そこで繰り広げられてたのは、大宴会。


「おーい、新八くーん!早くこっちこっちー♪」
「バカ!アイツはここだっつってんだろ!山崎ィ!!」
「新八ィ、やめときなせィ。マヨ臭くならぁ。」
「おいドSぅ!うちの新八に近寄んじゃないネ!!」
「リーダー、落ち着け!新八君、私と一緒に肉球を堪能しないか?」


等々、主要メンバーが揃いつつあるこの場所。
ちょ、新八!何嬉しそうに近づいてんのっ!?
行っちゃいけません!
あんな魔の巣窟に行っちゃいけませんんんーっ!

「あらあら、また一匹湧いて出てきたんですか?」

殺気を漂わせて、俺の背後に立ったのは当然新八の姉である。
背後を振り向きたくないが、一応挨拶をしておかねば、後が怖い。

「よ、ようお妙」

恐る恐る振り返ると、いきなり何かを口につっこまれた。
可哀相な玉子焼きである。

顔を赤白青に変化させながら、俺の意識は遠のいていく。

だめだ、銀時。
ここで意識を飛ばせば、新八がどうなるか。
愛は世界を救うんだぁぁぁーっ!!!


「新八ぃぃぃっ!」


なんとか復活した俺は、魔の巣窟の中心で取り込まれそうになっている新八の元へ駆け寄った。
乱れていない服に安堵の息を漏らす。

けれど油断は出来ない。
特に危険な、真選組の奴ら。
残念ながら、新八最強の守護神である妙は、ゴリラと交戦中だ。
ただいま唯一の味方である娘の神楽は、ドSの王子と乱闘中。

ここは、俺が守るしかない!
姫を守るは勇者也!!

そんな感じで進んでいく宴会。
俺はなんとか新八の隣をキープしながら、反対側の瞳孔ヤロウと相対する。

「ほら、新八。鍋に届かないだろ?よそってやるよ」

「あの、土方さん。なんでマヨネーズがたっぷりかかってるんですか」

「そうだよ!んなもん新八に食わせんじゃねぇよ!てめぇはマヨでもすすってろ!ほら、新八、こっち食え!」

「銀さん、なんで溶けたチョコが入ってんスか」

「てめぇこそっ!」「んだとっ!」

「「勝負だこらぁぁぁーっ!!」」


そうやって大乱闘と化したこの宴会は、突然幕を下ろす羽目になる。
キレた妙の手によって。

「てめぇら、じゃかぁぁしぃんじゃぁぁぁっ!!!」


ゴリラが飛び、鍋が飛び、色んなものが飛びまくり、俺らは追い出された。


顔をボコボコにされたゴリラを抱え、真選組は「この勝負は預けたぜ」とか捨て台詞を吐きながら去っていく。
俺の隣で神楽は真選組に罵声を浴びせている。
ヅラは、楽しい余興であったとかなんとか、つぶやきながら去っていった。


そして・・・


「新八君、嬉しそうだね」

「えぇ、今日はたくさんの人に会いましたから」

つらつらと挙げていく名前。
まさかの攘夷時代の仲間の名前とか、
そんなヤツいたっけ?なんて名前も出てくるし。

しかも鍋の材料はそいつ等からもらったんだとか。

一体何の日なんだ、今日は。なんてつぶやくと、そういう日もあるんじゃないですか?
と返事される。

とにかく・・・


「新ちゃん、浮気だけはやめてね」

「残念な事に、アンタが一番なんで。今は」


今は・・・ね。

それがずっとに変わる日まで、離れないようにしようと俺は決めたのだった。








END


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