頂きもの

□竜の虜
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恋なんて……忍の俺様には一生、縁がないものだと思っていた。

なのに…
なのに……


一匹の竜に、一目惚れしてしまった。





あれは、伊達と武田の戦……。
旦那は竜の旦那と一対一の戦い。

「うおぉぉぉぉぉ!!!」
「Ha!今回も威勢がいいな、幸村っ!!」

二人は目にもとまらぬ速さで攻撃を繰り返している。
たまに旦那の二槍が竜の旦那の脇腹や腕を掠めそうで……。
はぁ、と近くで溜め息が聞こえる。

竜の右目だ。

「あんたのトコの大将も、無茶苦茶だねぇ。ありゃ、うちの旦那よりも手に負えないわ。」

やれやれと肩を竦めてみせると、右目の旦那の鋭い双眼に睨みつけられた。

「政宗様の事を悪く言う奴は俺が斬る。」
「あ、あはは〜、怖っ。冗談だよ、冗談!」

なんて目つきだよ!!怖すぎる……。睨むだけで人、殺せるんじゃない?

「そんなことできるか……。」

しかも聞こえてるし!!

「隙ありでござるぁ…!!」
「ぐ…ぁ…っ!」

俺様が右目の旦那とそんなやり取りをしていると、低い呻き声とともに肉を裂いたような音がした。
はっ、と二人を見ると旦那の槍が竜の旦那の肩を貫いていた。

「政宗様!」
「旦那の方が強いね。やっぱ。」

いつも竜の旦那がするように口笛を吹いてやった。
その音に気がついて、竜の旦那は悔しそうにこっちを睨みつける。

その時の痛みに歪んだ顔は………





綺麗だった。







その後、旦那と俺様は竜の旦那を殺さず甲斐へ戻った。
旦那は、優しいから。
俺様が頼めば、何だって聞いてくれる。

「それにしても…佐助が政宗殿を助けるように言うとは…。何かあったのか?」

そう、俺様は旦那に竜の旦那を助けるように頼んだ。

理由は……

手に入れたいから。

あの綺麗な竜を地に墜とし、服従させたいから。


「佐助…、どうかしたか?」

随分、変な顔をしていたのだろう。
旦那が心配そうに俺様の顔を覗き込んきた。
急いで、柔らかい笑顔を作り、対応した。

「あ、ううん。何でもないよ……ぼーっとしてた…。」
「疲れておるのだろう。今日はもう休め、ご苦労だった。」
「どーも。んじゃ、お言葉に甘えて…。」

にっこり笑う旦那に軽く頭を下げて、俺様は自分の部屋に向かって足を進ませた。






「さ〜て、どうするかなぁ?」

どうする、とは勿論。
竜の旦那の事である。

「はぁー、まずは忍び込まなきゃ…。いつにするかな……。」

普段は殺して終わりだが、今回は違う。
手に入れたいのだから、絶対に殺してはならない。

「やっぱり夜、寝静まった時が……」

頃合い、かな。

誰もいない部屋でポツリと呟く。
障子を開けて、沈みかけている夕日を眺めた。

決行は今夜。

夜が更けてから、奥州の米沢城へ忍び込むつもりだ。

「ふ……ふははっ、あはははは!!」

やっと手に入る。
あの竜を…地に墜とすことが……。







夜も更け、漆黒の夜空に浮かぶ綺麗な三日月を見上げる。
俺様が今いるのは奥州。
計画通り米沢城に忍び込んでいた。

「上手く忍び込めた……っと!」

俺様は小声で喜び、屋根からそれほど広くない庭に飛び降りた。
しん…と静まり返っている部屋一つ一つに目をやる。

一体、どこが竜の旦那の部屋なのか……。

足音をたてないように庭を歩き、気配を探ってみる。

「はぁー、どこだろ?ぜんっぜん分かんないよ…。」
「誰だっ!?」
「!??」

俯いて歩いていると、前方から怒声に近い声が聞こえる。
マズい……バレたか。
冷や汗が額を濡らす。

「お前…誰だ?」
「え…っと、」

相手は暗くてよく見えないのか縁側から庭に下り、俺様に近寄ってくる。
汗の浮かぶ手にクナイを握り締めて…相手の様子を伺った。

「…忍……か?真田んトコの…。」
「…っ。」

やっと見えたのかきょとんとした顔で俺様の顔を眺める。
ぎゅっ、と握り締めたクナイを竜の旦那に向け、構えた。

「何の用だ…?俺の暗殺か?」
「違うよ…暗殺だったら、あんたはもう死んでる。」
「Ha!言うじゃねぇか…さすがは真田の忍。…んで、用件は……?」

竜の旦那はニヤリと怪しく笑うと、懐から短刀を取り出す。

「あんたを、……竜を手に入れる。」
「な……」

俺様は一瞬で驚いている竜の旦那の背後に回り、腕で思いっきり首を締め上げる。

「か……はっ、」
「大人しくしてなよ…」

苦しむ竜の旦那の耳元で低く囁くと、着物の下帯に手を伸ばした。









「んンっ……ぁ…、ぃや、ぁ!」
「…いや、って何が?こんなに感じちゃって……。可愛いよ、政宗。」
「ひゃっぁ!くっ…はぁ!!」

竜の旦那は、自分の両腕を縛っている縄を解こうともがく。

……無駄なのに。

少し笑いながら首筋に噛み付き、吸いあげてやると竜の旦那の白い肌に紅い跡が浮かび上がった。

「うわぁ〜、凄く綺麗だよ。花が咲いたみたい……」
「あっ…ふぅっ!さ…すけぇっ!!」
「病みつきになっちゃいそうだよ?そんなに可愛く啼かないで。加減できなくなる……。」

既に竜の旦那の中に入っている自分自身にだんだん限界が近づいているのが分かる。
こみあげてくるものを耐えて、突き上げてやると竜の旦那の男根が精液をしぶき、甲高く啼いた。

「っ、あ!んぁ、あああぁーー!!」
「くっ、」

同時に締まる中に耐えきれず、俺様は精液を吐き出した。





「んっ…。」

気を失い、ぐったりとしている竜の旦那の額を軽く撫でる。

「やっと手に入った…。もう逃がさないよ?俺様だけの物。くく……っ。」


後は伊達軍の人間と武田軍の人間を殺すだけ…。
大将、旦那。許してね……、俺様はもう竜の虜だから。



何があっても絶対に、離さない。
 

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