七霊

□魔法の言葉
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「テイト」


アイツがそう言うたびに、俺は幸せだな、と感じる。



















俺は昔、戦闘用の奴隷として軍に飼われていた。

その時、名前を呼ばれることはなく、呼ばれる時はいつも奴隷の番号だった。

だから、みんなに……、フラウに名前で呼ばれた時は、とても幸せになる。

ああ、俺はもう奴隷じゃないんだ。と、感じさせてくれる。


「何やってんだ、テイト。早く来いよ」


ラブラドールさんの庭園で俺を手招きするフラウ。

優しく名前を呼んで、優しく微笑みかけてくれている。

幸せだ、凄く幸せだ。


「ちょ、テイトっ!!??」


優雅にお茶を飲んでいたフラウが、慌てて俺に近付いて来た。

近くにいた、カストルさんやラブラドールさんも驚いたように、こっちを見ている。

「ど…どどどどうした、テイト!?」

「……へ?」


フラウが俺の前まで来て、あわあわと手を動かしている。

俺は何がどーなっているか分からずに、キョトンとフラウを見つめた。


「あ……あ、れ…?」


そして、目から零れている雫に気が付いた。

俺は……、泣いている…?


「テイト、どうした?何かあったのか?」


フラウが少しかがんで、俺の頬を伝う涙を拭いた。

その瞳は不安そうで、俺の事を心の底から心配してくれているんだな、と思った。


「なんでもない……」


いつまでたっても涙が止まらない。

俺は自分の服の袖で涙を拭き、フラウに笑ってみせた。


「…っ。……クソガキが…」


どうやら逆効果だったようで、フラウはもっと不安そうな顔になった。

そして俺の頭をガシガシと撫で、優しく抱きしめた。


「フラウ…」

「あ?」

「名前……呼んで欲しい…」


フラウの腕の中で、俺はそう呟いた。

その呟きを聞いたフラウは、小さく俺の名前を囁いた。





(貴方の言葉はまるで魔法)

(ほら、俺を幸せにしてくれる)




END


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