オリジナル

□珍しく平和な昼寝日和
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「そこで何をしているんだ、セレス。」

レフェトが木の根元で座っているセレスに声を掛けた。

「ああ、レフェトですか。今、自分の身近にいる馬鹿共について考えていました。」
「…例えば?」
「デルトとか、カインとか、ヴァンとかヴァンですよ。」
「…ヴァンが二人いるのは気の所為か。」
「気の所為です。」

レフェトもセレスの横に腰を下ろし、セレスの顔を見た。
そして始まる何時もの会話。

「全く、あの馬鹿共の頭の中はどうなってるんですかね。」
「確かに。あいつ等の行動は偶に意味不明だ。」
「偶に…?冗談でしょう!?何時も何時も!」

ヒートアップしてきたセレスを宥めるレフェト。
そこで、レフェトが立ち上がる。

「お前が一番嫌いな奴じゃないのか?」
「なッ…!」

振り返ると其処にはヴァンが立って、セレスとレフェトを見下ろしていた。

「今日は、セレス。」
「ヴァン…。」
「レフェト、カインとデルトが必死に探してましたよ。」
「誰が行くか。」
「デルトーカインー!レフェトが…」
「あーもう!」

レフェトは走ってどこかへ行ってしまう。

「あ、レフェト、私も…。」
「駄目。」

レフェトを追いかけようとしたセレスを、ヴァンが後ろから抱きしめる。

「っ…ヴァン…離しなさい。」
「セレス、凄く鳥肌立ってますよ?」
「当たり前でしょう!」

何とかしてヴァンを引き剥がそうと、必死にもがく。

「離しなさい!ヴァン!」
「嫌です。久しぶりの二人きりですからね。」

耳元で囁かれ、勝手に体から力が抜ける。
自然とヴァンの膝に座り込む形になってしまう。

「クス、本当に弱いですね、耳。」
「黙りなさい。」

セレスは少し落ち着いた様で、ヴァンの腕を押しのけるのは止めていた。
ヴァンは片手でセレスの腰を抱き、後片手でセレスの長い髪を弄る。

「ヴァン、いい加減離しなさい。」
「嫌です。まだ。」

ヴァンの心から和んでいるような声に、セレスは溜息を付く。

「自分と体格の変わらない男を抱いてて何が楽しいのか…。」
「楽しいですよ。セレスは反応が可愛いですから。顔が同じって言っても性格は少し違いますからね。」

そう言って、セレスの耳の後ろに口付ける。

「ッだから、そういうの止めなさいって…。」
「セレス、こっち向いてください。」

セレスは暫く嫌がるように黙っていたが、チラリとヴァンの様子を見る。
案の定、ヴァンは優しく微笑みかけてきて…。
セレスはヴァンのこの顔に弱かった。
何時もと違って、落ち着かない気分にさせられるからだ。

「ッ…、解りましたよ…。」

体の向きを変え、ヴァンと向き合う。その体制でヴァンの顔がかなり近づく。

「………。」
「どうしたんですか?急に黙って。」

ヴァンがセレスの頬を指先で撫でる。
と、行き成り頭の後ろに手を回し、顔にグッと近づける。

「ヴァン!離しなさい!」
「セレス、ただのキスですよ、良いでしょう?その位。」
「良いわけ無いじゃないですか。」

セレスがヴァンから逃れようと、身を捩る。
しかし、力の差は明確で無理矢理口付けられてしまう。

「んっ…!」

だがそれも、何時もより優しく、どこか力が抜ける。
離れ際に唇を舐められて、顔が熱くなる。

「クス、セレス、顔真っ赤ですよ。」
「う、煩いです!」

ヴァンから体を離そうとすると、そのまま倒れこむ。

「ちょっと、ヴァン!」

抱かれていたセレスも倒れ、ヴァンと横になる。

「少し一緒に寝ましょう?セレス。」
「い、嫌ですよ!」

暴れるものの、ヴァンは既に寝る体制で、暴れているのが馬鹿らしくなる。
大人しくしていると疲れが出たのか、急に眠くなる。
眠ってはいけないと思いつつ、目蓋がだんだんと下がってくる。

「ん…。」

最後の抵抗で声を出してみるが、その声も思った以上に眠そうで…
少しなら良いか、と思い諦めて眼を閉じた。


FIN.
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