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□遙か彼方へ
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一緒にいられなくなった分、毎日ではないが頻繁に来るメールや電話。コイツマジで前線で戦ってんのかよ。
母親の嬉しそうな声がリビングに響いた。兄からの電話だろう。
「あら遙じゃない!どうしたの、ちゃんと食べてる?ええ…、いるわよ。分かったわ、今変わるわね」
母親がこちらを見る。
出ろってことだろう。
携帯無視してたから自宅にかけてきたらしい。
あまりにも母親がうるさいものだから、電話もメールも適当に相手していた。
素っ気ないのに俺の声を聞く度、兄はいつも嬉しそうだった。
それがまた苛つかせる。
「もういいだろ、兄貴」
「あ、彼方…」
兄貴が何か言いかけてたが、俺は最後まで聞かず電話を切った。
その次の日、兄が戦死した。
母はあまりのショックに変わり果て、精神的に病んでいった。
そして、兄の代わりに選ばれたのが弟の俺だった。
「こんなことなら遙じゃなくてアンタが行けばよかったのに!」
家を出て行く間際に母は言った。
兄の代わりに俺が死ねば良かったと言いたいのは分かるが、無理言うなよ。国の命令なんだからさ。でも安心しろよ。
俺も選ばれた。兄と同じ場所に行くというのは気に入らないが。
配属が決まり、家を出た後に母親が自殺したらしい。
兄を失い精神的に病んでいった母親。