オリジナル

□夜明け前
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芹川家の人たち



「あーあ、なんで美人三姉妹+俺じゃないんだ…」
「別にいいじゃん暁兄。一人だけ平凡でも。うまくバランス取れてるよ」
(お前だけには言われたくない)
「萌、お前だけは俺の心のオアシスだ!むさっ苦しいほど美形な兄弟に囲まれても、一人だけ超可愛い妹を持った俺は世界一幸せ者だ!」
「ありがとう暁兄ちゃん。私も兄ちゃんたちは心のオアシスだよ(またネタができた)」
「も、もえ〜〜っ!」

妹の思惑を知らない兄だった。


「暁、寝技の練習付き合ってよ」
「イヤだ」
「あ、ずりぃよ都兄!暁兄は俺の的
になるの。俺の矢で暁兄の心臓(ハート)を射抜くんだから」
「お前は俺を殺す気か」

俺には霊感がある。幽霊という末恐ろしいモノなんて見えない方がいい。神様、なぜそんな余計なものを俺に与えたのですか?どうせ与えるのなら、整った容姿とか超天才的な頭脳を与えるとかにして欲しかったです。

(やばっ、目があってしまった)

木の陰からこちらを睨んでいる血塗れの女子生徒の霊。これはやばい。

「やぁ」
「ぎゃっ!」

突然背後から声をかけられる。俺は驚いて思わず声を上げた。恐る恐る後ろを振り向けば、美形が
いた。またかよ。

「君、見えてるんだろ?」
「は?」
「俺には分かるよ。君は一見平凡に見えるけど、なにかがある」
(なんだよコイツ…)
「気を付けた方がいい」
(やっぱ変な奴だな、関わらないでおこう)

美形だけど変人。

「あっ、俺幽霊が見えない奴には興味はないから」

それはどういう意味でしょうか。

これが幼なじみの夜との出会いだった。




俺の兄弟は人気がある。それは美形だからだ。

「って、俺は郵便屋か!」

兄弟に渡してくれという手紙が多数。俺の下駄箱はポストと化していた。俺の下駄箱に突っ込んでおけば兄貴たちに届けてくれるという魂胆なんだろう。
弟の潤は同じ高校で、一つ下の学年にいるからともかく、雅兄や都兄の分まである。
これが全て自分宛てだったらどんなに嬉しいことか。
いやいや、平凡な俺にとって世の中そんなに甘くない。


「あの、芹川君って響君と従兄弟同士でしょ?」
(奴にもかよ!)

はたまた同じ高校に通う従兄弟の響にも渡せといってくる。俺あいつ苦手なんだよ。昔から俺ばかりを狙ってちょっかいを
出してくる。小さい時はよく泣かされ、兄貴たちが庇ってくれたのを覚えている。

「ねぇ、この手紙。東君に渡してくれる?芹川君幼なじみだし仲良いでしょ」

幼なじみの千鶴も美形だ。しかも剣道部の主将。俺の周りにいるのは顔の整った奴らばかりだ。
次々に女子たちが渡してくれと押し寄せてくる。こうして悲しくも女子に逆らえない俺は手紙の配達に回るのだった。

うちの高校は去年から共学となり、その前は男子校だった。女の子もクラスで5、6人にしかいない程度だ。





「お前欲しいな」
「?」
「東 千鶴、俺と勝負しろ」
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