妖逆門

□メモB
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「三枝家…ってどこだよ」

我が儘を言って、夏休みの間だけ一人で旅行をすることを許された。
ホテルだとお金が掛るので、旅行先にある親の知り合いの家にお世話になることになった。
三志郎は渡された地図と荷物を抱え、お世話になる家を探す。
先ほどから必死に探しているのだが、なかなか見付からない。

「お前、多聞三志郎だろ」

「誰…?」

三志郎の背後には頭に赤いバンダナをした少年が立っていた。

「三枝敏雄。話は両親から聞いている。お前を迎えに来た」

「さえぐさ…あっ!」



「へぇー、トーキョーってすげぇなぁ」

彼が迎えに来なければ、この大都会で完全に三志郎は迷っていた。
初めての都会に心を踊らす。だが、歩くのが早くてゆっくり周りを見る暇がない。

「なぁ、もう少しゆっくり歩いてくれよーこれじゃあ何にも見れないぜ」

だが、三志郎の言葉を無視するかのように敏雄はどんどん先へと行ってしまう。



「ロンドン〜!」

「なんかロンドンって聞こえるけど…」

「コイツのことよ」

今度はすぐ後ろで声が聞こえた。二人は後ろを振り返る。すると女の子が一人たっていた。彼女を見て敏雄は口を開いた。

「亜紀」

「ロンドンはコイツのあだ名」

亜紀と呼ばれた女の子は敏雄を指差している。ロンドンとは彼のあだ名みたいである。そして雰囲気からして二人は知り合いらしい。

「で、アンタ誰?見ない顔よねぇ」

「コイツは多聞三志郎。親の知り合いの息子で夏休みの間だけウチで預かることになったんだ」

「へぇ、そうなの」

ロンドンが三志郎に代わって説明をすると亜紀は納得した様だ。すると亜紀は三志郎をジッと見る。

「ふぅん、三志郎ねぇ…私は日野亜紀。ロンドンとは何かと腐れ縁なのよ。まぁ、よろしくね」

「ああ!よろしくな亜紀」

三志郎は差し出された手を握り返した。





「なぁなぁ、俺もロンドンって呼んでもいい?」

あの後亜紀と別れ、再び三枝家へと向かっていた。
亜紀が敏雄の事をロンドンと呼んでいたためか、先ほどから三志郎もそう呼びたいとせがんでいる。ロンドンは相変わらず後ろで騒いでいる彼を無視して歩を進める。

「なぁ…ぶっ」

前を歩いていたロンドンがいきなり足を止めた。思わず、後ろにいた三志郎は彼の背中に顔を激突させる。

「な、なんだよいきなり…」

「着いたぞ」

「はっ?」

ロンドンの言葉に三志郎は顔を上げた。目の前には数十階と続くマンション。
三志郎は思わず感心してしまう。

「でけぇ、こんなところに住んでんのかよ」

「さっさと行くぞ」

ロンドンはボタンを押すと、来たエレベーターにさっさと乗り込んでしまう。三志郎も慌ててそのエレベーターへと乗り込んだ。




「お前の部屋ここだから。自由に使えよ」

「あれ、お前の父ちゃんと母ちゃんは?」

「仕事。だからほとんど家に帰って来ない」



「ギター弾くんだ」


「俺、東京タワー見たい!すっげぇ高ぇんだろ?」

「一人で勝手に行けよ田舎者。僕はギターの練習をするのに忙しいんだ」

(コイツ、マジで根性叩き直してやりてぇ…)

「あっ、何をする!返せっ」

「ほら、行こうぜ!ロ・ン・ド・ン!」

三志郎はギターを取り上げ、ロンドンを外へと連れ出した。




「全くクールじゃない」
「クール?」
「僕は常にクールに決めるのが筋なんだ」

「声楽家の母親とクラシック指揮者の父親に反発してロック好きになったのに、この有り様だぜ?音楽家の両親から生まれたのに俺にはその才能がないのさ」

「そうかな、俺は結構ロンドンの歌好きだぜ」
(確かに音痴だけど)




「三志郎…思い出をくれないか?」

ロンドンは三志郎に覆い被さると、噛み付くようなキスをする。
そして、首筋に唇を落とし吸い付いた。

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