オリジナル2

□現代クエスト
1ページ/4ページ

現代クエスト





「ここが、白夜家…」

少し街から離れた場所にその屋敷はあった。
屋敷も大きく、庭も広く、まさにお金持ちが住んでそうな屋敷。
求人広告にはこの屋敷に住む主人の世話をできる方とあった。つまり使用人。
年齢・経験不問らしいし、さらに住み込みで風呂トイレ、三食食事付き。家賃や生活費が浮く上にお給料も申し分ない。


幼い頃両親を事故で失い、叔父夫婦の家に引き取られてお世話になっていた。だが、高校卒業を期に自立を決意。別に仲が悪かったわけじゃない。二人は自分たちの間に子どもができなかったせいか、俺を実の子のように可愛がってくれて良くしてくれた。高校も出してくれたし、行きたいのなら大学も出してくれるとも言ってくれた。
だが、いつまでも甘えているわけにはいかないと決意した今の俺にはもってこいの求人だった。







「面接を受けにきました天郷勇輝です。本日はよろしくお願いします」
「お待ちしておりました。天郷勇輝様ですね。どうぞこちらへ」

まず屋敷にて俺を待っていたのは老年の執事と自分と同じぐらいのメイドの2人だった。
2人に続いて広い廊下を歩いていく。庭も広いけど、屋敷内も広い。部屋数も多いし、迷いそうだ。

(それにしても、メイドさん可愛いなぁ…)

「あのなにか?」
「あっ、いえ、なんでもありません!」

背後からの視線に気づいたのか、彼女は振り返る。鋭い。
いかん、いかん、今日は面接なんだ。
でも、採用されたらこの子と働くことになるのかな?
住み込みだし、つまり、こんな可愛い子と同じ屋根の下となる。少しワクワクした。

「ご主人様がお待ちしております、どうぞこちらへ」
「はい!」
「失礼します。天郷様がお見えになられました」

高級ホテルとかにありそうなこの豪勢で大きな扉の向こうには屋敷の主人が待っている。


「やあ、君が天郷勇輝君だね」

この人が屋敷の主?!
い、イケメンかよ、歳も若そうだし。
俺とそんなに変わらないよな…。
少し年上ぐらいだろうか。



「で、詳しい仕事の説明は次に来たときでいいとして、いつから来れそう?」

これって採用ってことだよな…?
緊張して、なにを話したか覚えてない。
いくつか求人を学校や職安から紹介して貰ったが、どれも不採用だったのだ。
卒業式を迎えてもなかなか就職が決まらず状態だった。
進学組の中には希望の大学に入学するために浪人する奴もいたけれど、就職組は俺以外卒業式を迎える頃には全員内定を貰っていた。
叔父夫婦もまだまだ焦らなくてもいいとは言ってくれたが、もう流石に内定を逃すわけにはいかない。

「いつでも大丈夫です!」


もう荷物はまとめてある。
明日からでも全然平気なくらいだ。


「凄いやる気だね。嬉しいな。でも、こちらも準備があるから週明けからでもいいかな?」












「どうみても、普通の少年。大丈夫でしょうか?」
「うん、でも可愛いよね」

「?」

素直でまっすぐで綺麗な目をしていた。

「まぁ、それより…」

「あの求人のことなんだけど、あれはね特殊な魔力が施してあって、特定の人間にしか見えないんだ。他の人間にはただの紙切れにしかすぎない」


彼にはちゃんと見え、それを頼りにここまで辿り着いた。
あれが見えるのは自分の命と代償に半分だけ俺の力を持ち去った人間。




これはもう運命なんだよ。
彼は俺の前に現れた。





「ふふっ、しかし随分と俺好みに転生してくれたなぁ…」


もう、逃がしはしない。



みぃつけた

俺の愛しい勇者さま。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ