テイルズ

□紫の悪魔と氷のお姫様
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パラレル


「ヴェイグ、ポプラおばさんがピーチパイを焼いてくれたの。休憩にしましょ」

少女の声にヴェイグは作業を止め、泥だらけの顔を上げた。

ヴェイグたちの村は、資源などが豊富でそれらを税として大国に納めていた。


「最近来た騎士様は村の皆に人気があるみたい」
「そうなのか?」

大国から派遣され、監視をする騎士。それは定期的に変わるが、傲慢な人間が多い。
今回派遣されてきた騎士はサレとかと言った。遠くで見たことがあったが確かに皆が言うように顔は悪くない。村の女の子たちはよくその騎士に差し入れを持って行くという。噂では老人や子供にも優しいだとか。前の騎士は無理な労働を要求し、理不尽なことを言い大変であったが今回はそうでもないらしい。

だがヴェイグはサレという人物が苦手だった。特に話したことはなく、遠くから一目見ただけだったが。
なんとなく関わってはいけないような気がして、距離を置いていた。

「おいしそうなパイだね」
「騎士様!」

クレアの声に、ヴェイグは後ろを振り向いた。
紫の髪の男が立っていた。

「やぁ、クレアちゃん」
サレはクレアに挨拶するとヴェイグに視線を向けた。

「それと君のことはよーく知っているよヴェイグ」
「………」
「よく働いてるよね。若いのに大変だ」

この村には男の、特に若手の働き手が少ない。ヴェイグは女だが、背も高く、身体もしっかりしていたため、力仕事のが向いていた。だからお世話になっているクレアの父親や村の男たちと一緒に働いている。しかもよく男と間違われる。

この騎士もヴェイグが女であることに気付いてないだろう。

まぁそれはいいのだが。

「あの良かったらどうです?近所のおばさんが焼いてくれたんです」
「おいしそうだけど遠慮するよ。良いラズベリーが手に入ったんでね。またね、クレアちゃん、ヴェイグ」
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