よろず2

□櫂アイ
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アイチは買い物へ向かう途中、ふと足を止めた。
もうすぐ選挙が始まるのだろう、上層部の候補者たちが演説を行っていた。

彼らは貧しい人間を救ってはくれなかった。
母も妹も犠牲になった。

アイチはこれ以上ここにいても無意味だと踵を返そうとした。

「くだらんな」

いつの間にいたのだろうか。アイチの隣には茶髪の青年が立っていた。
青年は眉間に皺を寄せ、さぞ詰まらそうに上層部の連中の演説を聞いていた。


僕らは出逢った。不平等なこの世界で。




「つまらなさそうだな」
「?」
「お前も」

突然隣にいた青年が呟いた。独り言ではなく、アイチに話しかけていたようだ。

「えっと…その…そういうことはここではあまり…」

アイチは周りの目を気にする。どこかで聞かれたらどんな目に会うか。そういう世界だった。
だが、青年は得に気にする様子もなく続けた。

「構わん、どうせ聞こえてはいない」

すると青年は興味を無くしたかのように演説の人混みから離れ、居住区へと繋がる路地の方へ消えていった。
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