遊戯王

□怪盗パロ
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「カードは大事に保管しとけよ社長さん」

海馬の足元に置かれた大量に詰め込まれたトランク。遊戯は屋根の上から見下ろし笑った。逆光で海馬から遊戯の顔は見えない。




「貴様のおかげで無事に商談が成立した、礼を言う」
「そう、なら次は気をつけるんだな」






「今日もすげぇなぁ、キング」

白の衣装に身を包み、キャンパス内を歩く金髪の男、ジャック・アトラス。周りには女子学生の取り巻きがついている。彼はキャンパス内ではキングと称されていた。

「アイツ最近、例の怪盗を追いかけてるんだってさ」
「えっ、女のケツを追っ掛け回してんじゃなかったのか?アイツ女遊びで有名だったじゃねぇか」
「それが最近パタリとやめちゃったみたいだぜ?ほら」

女子学生に囲まれているキング。健全な男子なら羨ましい光景。だが彼にとっては迷惑であり、ちょうど適当にあしらっているところだった。

「男の敵め」
「まぁいいんじゃない。俺達には関係無いしな」
「そうだな」
「で、遊星は何やってんだよ」

遊星は興味を示さず、友人達の横でパソコンに目を向け、カタカタとキーボードを打っていた。今夜の仕事の情報収集である。


ピピピッ
遊星の携帯に姉の遊戯からメールが入る。どうやら予告状を出したらしい。
(なるほど…)
遊星は了解したと返した。




「武藤遊星」

遊星が顔を上げれば、キングことジャック・アトラスが彼女を見下ろしていた。最近妙に遊星に突っかかってくる。遊星はノートパソコンを閉じると顔を上げた。

「なんですか?」
「お前、いつもパソコンばっかりいじくっていて暗い奴だな」
(余計なお世話だ)
「もしや、キングが女遊び止めたのって遊星が原因…」
「バカ、怪盗だろ」
「でも遊星ってあまり喋らないから目立たないけど、よく見れば美人だしな」
「じゃあ、二股…」




「そういや、アイツも機械が得意だったな」
「アイツ…?」
「気になるのか?」
「いえ別に」
「フッ、いま世間を騒がしている怪盗だ」
「そうですか」
「彼女が俺のことをキングと言った。俺のことをキングと呼ぶのはこの大学に通う奴らぐらいしか思い浮かばなくてな」
「アトラスさんは外部でも結構有名ですから(そんなこと言ったけ?)」
「そうか、有名か…」
(コイツ、俺を疑ってんのか)

だとしたら厄介だ。ここには友人達もいる。下手に騒いでバレたりしたら姉達もろとも最期だ。
遊星は出来るだけ平然とし話をはぐらかした。

「で、俺に何故そんな話をするんです?」
「可愛い顔をしているのに勿体無い」





「遊星ってば最近ジャックに言い寄られてるでしょ!」
「あれは一方的にあっちが話掛けてくるだけだ」






「よっ、遊星!」
「十代姉さん?!」
「なんで大学に…」
「今日からここの購買部で働くんだよ」


「よっ、ヨハン!」
「なんで十代がここに?」
「バイト〜大学の購買部のな」





「最近、この辺で女子大生を狙う犯罪が目立ってるらしい。だから気を付けてくれと注意を促すためにこの辺の各大学を回っているんだ。さっき理事長と話してきたところ」
「へぇ〜そうなんだ、遊星気を付けろよ。最近は物騒だよなぁ。ヨハンも怪盗ばかり追ってらんねぇんだな」
「そういう十代こそ気を付けろよ」
「俺はへーき、へーき。いざとなったら殴り飛ばすし」
「あのな…」
「それにいざとなったらヨハンが守ってくれるんだろ?」
「へっ?あ、その…当たり前だろ!十代に何かあったら俺…」
「さすが市民の平和を守る警察官!期待してるぜ、皆が安心できるよう頑張れよ」
「えっ、皆…うん、そうだな」

(ヘタレ…)

遊星は大変だなと二人を見ていた。幼なじみを思春期頃から意識しているヨハンに対して十代は鈍い。遊星はせめて二人だけで話せるよう、ヨハンの為にも邪魔モノである自分はすぐさま立ち去ろうとした。

「じゃあ俺は今日の講義が終わったから先に帰ってる」
「えー、もう行っちゃうのかよ遊星」
「ああ、戦場に行ってくる」

遊星は鞄を手に持ち、バイクのある駐輪場へと向かって歩き出した。

「戦場ってなんだ十代?」
「あ、そっか。そういやアイツ今日夕飯当番だったけ?もういかないとスーパーのタイムサービスに間に合わないもんな」
「そうなのか…」


「十代ちゃ〜ん、ちょっと手伝っておくれよ」
「あいよ、トメさん!じゃあまたなヨハン!」



「お前ウチの社員だったんだな」
「警察に突き出せばいいだろ」
「そんな事したら他の仲間達にも被害が及ぶのではないのか?」
「くっ…」

ここで下手に動けば、妹達にも被害が及ぶ。遊戯は自分の失態に悔しさの余り唇を噛み締めた。

「別に俺はお前を警察に突き出すために追いかけていたわけじゃない」
「じゃあ、なぜだっ」
「昼間とはまるで違うな」

昼間とはおそらく海馬コーポレーションで働く遊戯をさすのだろう。

「興味を持っているのは確かだ」
「興味…?」
「貴様には借りがある」

海馬は遊戯に近付くと、軽く口付けた。遊戯は一瞬の出来事に呆然とするだけである。
我に返った時には海馬が何かを企んでいるような笑みで遊戯を見ていた。
「何故こんなことを…?」
「………父さんと母さんを殺した犯人を探している」
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