遊戯王
□パロA
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「キングは一人!この俺だ!」
天を指差し高らかに宣言するセリフは毎度画面越しで見るのと同じ。観客席ではキングと叫ぶ声が四方から聞こえる。
「裏切りの果てに掴んだ栄光のくせに…そんな偽りの栄光なんて消してやる」
(アイツは裏切った、サテライトの皆を、母さんを…)
遊星(遊)はジャックを睨み付けた。
「アトラス様、お疲れ様です」
試合を終え、ジャックはスタジアムを後にする。
外に出た瞬間、ジャックと狭霧の前に赤いDホイールが止まった。Dホイールから降りると被っていた赤いヘルメットを外す。乗っていたのは女だった。その瞬間ジャックは目を見開いた。
「ゆ、ゆうせい…?」
ジャックがサテライトを去って以来、一度も会っていなかった。あの時のままの彼女がいた。
「ゆうせ…」
「俺はお前を認めない」
17年経ったわりにはまだ顔つきは幼く、年相応には見られないが、彼女は確かに「不動遊星」だった。
狭霧に調べてもらった対戦相手のデータを見る。
「最近プロ入りしたみたいで、スゴい成績を納めてますね彼女。まだ一回も負けてないようです。このまま勝ち続ければキングと対戦する日が来るのもそう遠くはないかと思います」
「そうか」
「しかしなぜ急に?」
普段は試合前に対戦相手のデータを渡しても、ろくに見ないくせに珍しい。
「昔の…」
ジャックはそう言いかけて口を噤んだ。彼女に突き付けられた言葉。もう「仲間」とは言えないかもしれない。裏切ったのは自分。