オリジナル

□夜明け前
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はじまりの


「暁、今日はこの廃病院に行こうか」
「ゼェ…ゼェ…っ、イヤ…だ」

こっちは息を切らしながら全速力で逃げ回っていたのに、息一つ切らさず、笑顔で迫ってくる男。
渋谷 夜。歳は一つ上で先輩になる。俺の幼なじみ。彼は美形で成績も優秀であり、すぐに注目になる人物。
だが、一つ問題が。
彼の本当の姿はオカルト好きな変人。普段はクールなキャラを装っているくせに心霊スポットを見つければ目に火がついたように変わり、即調査したがる。
逆に俺、芹川暁はちょっと運動神経が良いだけの容姿も成績もともに平凡な男子中学生。あとは3人兄弟の三男坊。兄二人は美形だ。兄弟2人は母さん似、俺は父さん似だ。ただ兄弟たちの中で一番霊感が強い。
おそらくその霊感のせいなのか、オカルト好きのこの変人に目を付けられてしまった。昔から嫌々ながらも振り回されていた。

「場所からして暁んちの近くだね」
「え、まさか…」
「今夜はココで検証するから。それに明日からは休みだし、暁んちに泊めてね」
「はぁああああああっ?!」

ふざけるな。ココは不良の溜まり場にもなってるんだ。俺は止めたが、怖いもの知らずな夜は満面の笑みで、今夜は絶対にコ
コへ行くからと聞かない。
「なら一人でいけ。俺は嫌だからな」
「えー、暁がいないとつまらないじゃないか。まぁ、どこへ逃げようと必ず連れて行くからいいけど」

こんな感じで毎回全力で逃げても、なぜか捕まってしまい、無理矢理奴が計画した心霊スポット巡りツアーへと連行されるのだ。
そしてそんな俺を面白がって見る奴や、今日も変人に捕まってしまったかと憐れな目で見ている奴もいた。夜が一応美形なので女子の視線もチラホラと感じる。日常茶飯事なのでもう皆慣れてしまっているらしい。


(誰か助けてくれよ…)
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