心の欠片は砕かれた
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唸るような風が、塔に吹き付ける
まるで、この城のおぞましさを物語るかのように
だが、塔の中を歩く五人には風の音が届くはずもなかった
「蔵馬、傷は大丈夫かよ」
「ああ、動けない程じゃない。どうやら、紬の処置が良かったみたいだ」
『あ、当たり前でしょ』
当然のように言っているが、どうやら褒められたことに照れているようだ。少し赤らんだ表情がそれを物語っている。
それを見た蔵馬と幽助は、思わずニヤリと笑った
「だが、戦えるほど浅い傷でもないだろう。予定が狂ったな…。蔵馬を欠いて残り三匹か」
飛影の指摘に、紬がうっ、と言葉を詰まらせる。
そんな紬の様子を知ってか知らずか、桑原が意気揚々と言った
「なーに、次の相手はオレにまかせとけ!」
「蔵馬が勝つまでびびりまくってたくせによ」
「うるせ!いきなりで驚いただけだ!」
『…嘘』
「うるせーぞ、紬!それに、オレだってオメーが師範のところで修行してる間何もしてなかったわけじゃねぇ。」
所謂ドヤ顔の桑原。
「色々試しているうちに、自分自身の手だけでも霊気の剣を出せるようになったんだ」
ほらよ、と桑原が霊気の剣を出す。
木偶の棒じゃなかったのか、と飛影と紬が口を揃えて言った。
またしても飛影に絡んだ桑原を、少し怒り気味の幽助が止める。
「…ちっ、まあいいや。だが、これからがオレの研究の成果だ。いいか!見てろよ!」
剣よ伸びろ!!と、桑原の掛け声に、霊気の剣が槍の如く伸びる。
幽助が感嘆の声をあげた。
どうやら、桑原の意志により伸縮自在のようだ。
「前はいきなり化け物を見てびびっちまったが、もう心の準備もOKだ。次の相手はオレに任せて貰おう!」
勇ましく言い放った桑原が霊気の剣をしまった。
が…。
「うっ…霊気の放出でかなり疲労が…」
「じゃやんな!!戦う前に!!」
『ごもっとも。』
その刹那である。
五人が向かう先から、地の底から響いたような雄叫びが聞こえたのは。