wings of words
□異世界からの忘れ形見
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私は異世界で17年間護られていた子
自分の背負った運命のせいで、
実の母親や義理の父、
弟や妹と生き別れた子
そして私は実のお父さんを、
死者だったとはいえ殺した子・・・
異世界からの忘れ形見
「全てが終わったら、長官がこれを貴方にと・・・」
「・・・手紙?」
ダークシグナー達との戦いが終わり、少し落ち着いた頃、狭霧 深影が渡してきた手紙を手に取り、不動 遊星は首を傾げた。
「もし自分に何かあった時に、貴方に託したい娘がいると・・・これから車でその娘の元へとご案内します。手紙は、その間に読んでおいてください。その娘と会う前に読んでいただくよう、言われていますので・・・」
深影はそう言って、遊星を車の後部座席に乗るよう促した。遊星は後部座席に乗るとすぐに手紙を開け、手紙を読みはじめた。
内容は、託したいという娘のことが書かれてあった。
『名前は、星宮 嘉穂。
歳は遊星と同じ。
嘉穂の父親は、ルドガー・ゴドウィンやレクス・ゴドウィンと同じく遊星の父親の助手をしていて、
17年前のゼロリバースに巻き込まれ、死亡。
最期まで遊星の父親の味方であったとのことだ。
嘉穂と嘉穂の母親、そして嘉穂の母親の胎内にいた赤ん坊は赤き龍によって異世界に飛ばされたらしい。
そして遊星とジャック・アトラスがぶつかり合い、赤き龍が初めて遊星達の前に現れた日に、背負った運命によって嘉穂のみがこの世界に帰還。
父親とも母親とも姓が違ったのは、数年前に母親が再婚したかららしい。
新しい弟と妹ができたそうだ。』
そこまではまだいいとしよう。しかしその後からのことが、遊星の眉間に皺を寄せることになる。
『彼女の運命は、シグナー達の痣をその魂で繋ぎ止めること。
そして赤き龍からの力を、シグナーに与えること。
つまり、赤き龍は嘉穂の魂なくしてはシグナー達に力を与えることもできず、またシグナー達の痣を繋ぐこともできないのだ。
だから自分の身を護るため、赤き龍に産まれた瞬間から授けられた特殊な能力が備わっている。
そんな嘉穂のことを、ダークシグナー達が狙わないはずがない。
ダークシグナーは嘉穂にもシグナー達同様、刺客を放った。
それは、
嘉穂の実の父親だった。
嘉穂の実の父親が自分の意思で実の娘と戦うわけがない。
地縛神が嘉穂の実の父親を操ったのだ。
嘉穂は実の父親の顔を、母親が唯一所持していた1枚の写真を見て知っていたようだ。
既に死んでいるとは言え実の父親を倒してもう一度死なせるなんて、嘉穂はできないと、一度は決闘を放棄しかけた。
しかし嘉穂の実の父親は気力で地縛神の呪縛を一時だけ逃れ、嘉穂に言った。
「お前が父さんを倒して、
父さんを呪縛から解放してくれ。」
と・・・・・
嘉穂は泣きながら実の父親を倒した。』
確かに嘉穂はシグナー達同様に世界をダークシグナー達から守った。
しかし自分の心を大きく犠牲にした結果、だが・・・
(俺達がダークシグナー達と戦っていた裏に、もう一つの戦いがあったのか。しかも嘉穂はたった独りで、相手は自分の家族・・・嘉穂の心は・・・・・)
嘉穂の心中を思うと、胸が締め付けられる遊星。
血が繋がっていないとは言え、家族同然のマーサを一度なくしかけたのだ。その時どれだけ自分が、共に育った仲間が、マーサのもとにいた子供達が悲しく、そして辛かったか・・・
とにかく早く嘉穂に会いたいという心が、遊星を駆り立てた。
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