wings of words

□心映しの氷結界
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 デュエルディスクを装着し、決闘を始める嘉穂と遊星。先攻は遊星。
 遊星はデッキからカードを引いた。






遊星 LP4000
  vs
嘉穂 LP4000















心映しの氷結界
















「俺はモンスターカードを墓地に送り、クイック・シンクロンを特殊召喚する。さらに墓地に送ったレベル・スティーラーをクイック・シンクロンのレベルを下げて特殊召喚。そしてスピード・ウォリアーを通常召喚だ。」
 次々とモンスターが出てくる。その光景を見て、嘉穂は冷静に何をするのかを読み取った。
(レベル7の・・シンクロ、モンスター・・・)
 嘉穂の思惑通り、遊星はこのターンにレベル7のシンクロ召喚をした。
「集いし思いがここに新たな力となる。光差す道となれ!シンクロ召喚!燃え上がれ!ニトロ・ウォリアー!!」
 ニトロ・ウォリアーが攻撃表示で現れる。1ターン目から攻撃力の高いモンスターに、嘉穂は少したじろぐ。
(っ・・・でもこっちにはこの子達がいる。)
 そう頭の中で思っているうちに、遊星はリバースカードを一枚伏せてターンを終了した。
「私のターン。二重召喚を発動し、このターン私は通常召喚を二回行う。私は裏側守備モンスターと氷結界の水影を攻撃表示で召喚する。」
(攻撃力1200を攻撃表示?)
 氷結界の水影が現れると同時に、遊星は何かあると身構えた。
「バトル。水影、お願い。」
『御意。』
 嘉穂の言葉とともに氷結界の水影が跳躍する。
(何をする気だ!?)
「氷結界の水影のモンスター効果発動。自分フィールド上に存在する表側表示モンスターが全てレベル2以下の場合、水影は相手プレイヤーにダイレクトアタックすることができる。」
「なんだと!?」
 氷結界の水影の攻撃が遊星に届く。その時だった。












 ある・・じ、を・・・







(っ声?誰の・・・?)
 そう思うが気にしている隙などなく、遊星は罠を発動する。
「くず鉄のかかしでダイレクトアタックを防ぐ!」
「っ・・私はカードを一枚伏せ、ターンエンド。」
 嘉穂のターンが終了し、遊星のターンが回ってくる。遊星はデッキからカードを一枚ドローする。その時、嘉穂が罠を発動した。
「トラップ発動、停戦協定。裏側守備表示で存在するモンスターを表側守備表示にする。ちなみにこの時、リバース効果は発動しない。そしてフィールド上の効果モンスター一体につき、相手に500ポイントダメージを与える。」
 そう言いながら、嘉穂は自分フィールド上の裏側守備表示のモンスターを表側守備表示にした。
「効果モンスターはフィールド上に三体。よって1500ポイントのダメージ。」
「ッ!!」
 1500ポイントのダメージが遊星のライフポイントを削る。



遊星 LP4000→LP2500




「そして表側守備表示になった氷結界の守護陣の効果発動。自分フィールド上にこのカード以外の“氷結界”と名のつくモンスターが存在する時、相手はこのカードの守備力以上の攻撃力を持つモンスターで攻撃できない。」
 氷結界の守護陣が嘉穂の回りを氷の壁で包んでいく。まるで今の嘉穂の心だと、遊星は何となく率直に思った。
(ッ・・・氷結界の守護陣の守備力は1600・・・っここまでの戦術、今の俺の手札では何もできない・・・!)
 遊星は何もできず、ターンを終了した。
「私のターン。」
(!・・・今日は引きがいい。)
 ドローしたカードを見てそう思いながら、瑞穂はドローしたカードをフィールドへと召喚する。
「氷結界と名のついたモンスターがフィールドに存在する時、氷結界の伝道師は手札から特殊召喚できる。そして氷結界の舞姫を通常召喚。」
 嘉穂はまたしてもモンスターを二体フィールドに呼ぶ。
「レベル3の氷結界の守護陣に、レベル2の氷結界の伝道師とレベル4の氷結界の舞姫をチューニ・・ん・・・」















 やるんだ、嘉穂・・・













 シンクロモンスターのカードを手にした瞬間、まるで電流が身体に走ったように嘉穂はビクンと体を揺らし、そのまま持っていたカードを落としてしまう。
「?嘉穂・・・?」
「・・・ぃ、や・・・いや・・いやッ」
 首を横に振り、ただいやいやを繰り返す嘉穂。そして頭を抱え、突然ガクリと膝を折った。途端に氷結界の守護陣が織り成した氷の壁がバリーンと音をたてて砕け、床へと落ちる。まるで決闘を放棄したと告げるかのように。


(ソリッドビジョンのはずなのに消えない?・・・まさか、これが自分の身を守るための能力?)
 嘉穂に駆け寄りながら、回りに散乱している氷の破片を見てそう推測する。さっき自分が攻撃されたとき、衝撃がなかったことから力をコントロールできていることも容易に分かった。
「嘉穂っ、嘉穂落ち着けッ!!」
「殺、した・・・私が、私がっ・・・この子の、手・・汚しッ・・・」
 半狂乱になる嘉穂を必死に抱き寄せる遊星。だが嘉穂はその腕を振り払い、遊星と距離をとった。
「ゃだ、来ないで・・・守護陣、守護陣ッ!!」
 まるで怯えるように遊星を見て、守護陣を呼び出す。そして再び嘉穂は氷の壁に包まれた。今度はさっきより隙間なく、誰も入れないようにして・・・











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