wings of words

□温かい言葉
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「ぁ、遊星っ、お前昨日から帰ってこねーでどこ行ってたん、だ・・・って」
 遊星の後ろについてきた嘉穂を見て、クロウそしてジャックは目を見開いて驚いた。


















温かい言葉















「・・・という訳だ。」
「ょ、よろしくお願いします。」
 一通り遊星が説明し終わり、嘉穂が一礼をする。
 いろいろと信じ難いことばかりの説明だが、赤き龍が関連していることと真面目な遊星の言葉だということで、2人とも信じてくれた。












「事情は分かったけどよ、なんで嘉穂の母親とかは帰ってこねーんだよ?赤き龍が一緒に連れてったんだろ?だったら帰ってくる時だって・・・・・」
「それは・・・私が願ったから・・・・・」
 自己紹介の後、いきなりのクロウの疑問に、少し震えた声で答える嘉穂。
「願った?」
 嘉穂の言葉に今度はジャックが疑問を抱き、尋ねる。
「こっちに帰ってくる時に赤き龍に事情を説明されて・・・その時に、お願いしたんです。お母さんや弟はあっちの世界に残しておいてくださいって。みんなと、引き離したくなくて・・・」
「なら、家族ごとこっちに来ればよかっただろ。」
「私とお母さんと弟以外はこっちの世界で生を受けた人間じゃないから、こっちの世界の力であっちの世界からは来れないらしいんです。だからお父さんや下の弟妹があっちの世界からこっちの世界に来るには、あっちの世界の力を使わないと・・・・・」
 遊星の言葉に無理だと答えた嘉穂の言葉に頭がこんがらがり、頭に?マークを浮かべるクロウ。それを察したのか、ジャックが口を開いた。
「ようは自分の生を受けた世界にある力でなければ駄目だということだろう。」
 ジャックの言葉にやっと理解するクロウ。



「あっちの世界で、お父さんがいないことに何年も傷を癒すことができなかったお母さんにやっと新しい家族ができたんです。上の弟にだって友達とかの繋がりがある。だから私の我儘で周りの人と別れて悲しんでほしくないんです・・・・・」
 嘉穂の言葉に納得するジャックとクロウ。だが1人、遊星だけが納得していなかった。

















「・・・お前にも、家族や友達との繋がりがあって、お前がいなくなって悲しむ人がいるんじゃないのか?」
 遊星の言葉に、うっと口を噤む嘉穂。
 遊星のその言葉は、何より嘉穂が1番よく知っていた。きっと少なくとも、自分がいなくなってお母さんや上の弟は悲しむことを、誰よりも・・・・・















「分かってます。自惚れじゃないけど、私がいなくなって少なくともお母さんや上の弟が悲しむことぐらい・・・・・でも・・・いいんです。自分のエゴで大事な人達を他の大切な繋がりまで断ち切って悲しませたくないですし・・・・・」
 ニコッと笑みを浮かべてそう言う嘉穂。だがその震えながらも気丈に振る舞おうとする声音から、嘉穂が内心とても辛いんだということを容易に感じ取ることができた。



















「なら、俺達がその家族や大切な人の分を埋めてみせる。」
「っ、遊星・・・」
 遊星の言葉に、目を見開く嘉穂。
「まぁ、そういうことならいいだろう。」
「俺達みたいなのが家族だと、大変かもしんねぇけどな。」
 ジャック、クロウが遊星に続いて嘉穂に笑みを投げ掛けてそう言葉をかける。
「ジャックさん・・クロウさん・・・」







 みんなの言葉に嬉し泣きした嘉穂に、3人がワタワタしたのは言うまでもない。














 嘉穂、もうお前はこの世界で独りじゃないんだから



 お前だけで抱え込む必要はないんだ






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