wings of words

□直感感情
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 嘉穂が遊星達のもとにきて2週間。


 ゾラは嘉穂にとても優しくしてくれた。
 嘉穂の手先が器用だということを知ると、自分の店で時計を弄らせてみたり。
 他にもジャックやクロウにさん付けや敬語を使わなくなったり、アキと女友達になったり、龍亞や龍可とは兄弟のようになったり・・・


 徐々に徐々に、嘉穂は生活に慣れていった。






 今もゾラのところへ働きに行っている。



















直感感情















「意外にここの生活に慣れるの早かったな、嘉穂。」
「あぁ・・・」
「まぁ性格はきつくないしな。ちょっと人見知りだけど、慣れれば懐くし・・・」
「・・・あぁ・・」
「基本あんまり人を嫌おうとしないし、俺は結構好きだなぁ嘉穂。」
「ッ・・・・・」
「やめろクロウ、あまり遊星を虐めるな。エンジンテストの時に爆発させられたら1番に被害を受けるのは俺なんだぞ。」
 嘉穂が作り置いといてくれた昼食の炒飯を、男3人で食べている遊星、ジャック、クロウ。
 遊星は半ば持っているスプーンを曲げてしまいそうで、そんな遊星を見てクロウは面白そうにニヤニヤとしている。ジャックはそんな2人を見て半ば呆れ気味だ。
「はいはい、分かったよ。別に嘉穂が好きなのは家族的な意味だしな。・・・で?遊星はいつ嘉穂を好きになったんだ?恋愛的な意味で。」
 スプーンをくわえながら頬杖をついて、いきなり核心めいた質問を遊星に問い掛けるクロウ。
「っ、どうしてそれを「お前とは長い付き合いだからな、嫌でも分かっちまうぜ。」」
 まだ誰にも打ち明けてない嘉穂に対しての感情をクロウが知っているのに遊星は驚くが、クロウはさも知っているのは当然だと言うようにニッと笑む。
「たしかにな。それにお前の嘉穂に対しての接し方を見ていれば、誰でも分かる。」
 ジャックの言葉の後に、まぁ知らないのは嘉穂と龍亞ぐらいじゃねーか?と笑いながら言うクロウ。
「で、いつなんだよ?」
「・・・・・きっかけは、初めて嘉穂と出会った日だ。」
 その答えは流石に予想してなかったのか、ジャックは口に含んだばかりの炒飯を吹きそうになり、クロウはくわえていたスプーンを落としそうになった。
「っ初めて出会った日って・・・それって嘉穂がどんな奴か分からねぇ時じゃねぇか!今まで言い寄ってきた女はよく知らねぇからってふっといて・・・・・」
「・・・自分でもよく分からないんだ。ただ、嘉穂の弱々しい姿を見て、俺が守らなきゃと思った。それから、一緒に暮らしていくうちに・・・」
 俯き、少し顔を赤くしてそう言う遊星を見て、お前がこうなるなんて重症だな、と頭をかくクロウ。
「まぁハズレということはなかっただろう。」
「ぇ、何?何か当たったの?」
 噂をしていた当の本人が現れ、3人は思わず食べていた炒飯を吹きそうになった。


「ぁ、ごめん・・・味付け、変だった?」
「ぃ、いや違うんだ!集中して話をしていたから、嘉穂に気づかなくて驚いただけで・・・」
 不安げな表情をした嘉穂を見て慌ててそれを否定する遊星。遊星の珍しい表情に、クロウは思わず笑いそうになった。
「ならよかった・・・で、何がハズレということはないの?」
 そう尋ねながら遊星の前の席に座り、手に持っている炒飯が盛られた皿をテーブルに置いて食べはじめる嘉穂。
 そう尋ねられると、3人して答えようがなくなってしまう。その時何か思いついたのか、クロウが口を開く。
「あぁあほら!今、商店街で福引きやってるだろ?俺達がやったらハズレはないだろってさ。」
 そうごまかせば、あぁ皆ドロー運いいもんねと嘉穂は笑う。
 何とかごまかせたと、3人は嘉穂にばれないように息をついた。
「私ああいうの当たらないんだよね。だから1回分貯まってるけどまだやってない。」
「貯めるだけ貯めても意味ないだろう。」
「そうだけどさぁー・・・」
 ジャックの言葉は尤もだが、うぅうとなってしまう嘉穂。
「何か欲しい物でもあるのか?」
 遊星の言葉に嘉穂はコクンと大きく頷く。そんなに欲しいものなのだから、おそらく1等や2等のような物なのだろうと3人は思う。だがそんな考えを裏切るような言葉を、嘉穂は発した。








「4等のぬいぐるみ、ロードランナーのぬいぐるみが欲しいの。」
「おまッ、俺はてっきり1等の海外旅行とか2等のオーブンレンジとかかと「だって海外旅行はペア一組だから皆で行けないし、家電は基本遊星が作ってくれるし、今ここにあるので十分だし・・・ぬいぐるみ、好きだし。」」
 クロウの言葉にそう返す嘉穂。たしかにそう考えていったら、4等のぬいぐるみに行き当たるのは当然と言えば当然だろう。
 ある意味欲がない奴だなぁとクロウは内心苦笑した。
 その時、ジャックが口を開く。








「なら遊星と一緒に行ってこい。遊星なら引き当てるだろう。」
 ジャックの提案に目を丸くしたのは嘉穂ではなく遊星だった。目でなんでとジャックに訴えれば、一緒に出かけるチャンスだろうと言いたげな視線が遊星に返ってくる。
「本当?じゃあ遊星、悪いけど明日の買い物のついでにお願いできる?」
「あ、あぁ・・・」
 そう遊星の了承の返事を聞くと、嘉穂は嬉しそうに笑みを浮かべてありがとうと礼を言う。
 その笑みを見て顔をほんのり赤くしつつ、遊星は口添えをしたジャックに感謝した。












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