wings of words

□決断
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「・・・ねぇ、どうしたらいいと思う?」
『いいじゃない、やりなさいよ。』
「でもさぁ・・・」
『自信ないの?』
「ぅん・・・・・」
 氷結界の舞姫、守護陣と話している嘉穂。今、嘉穂は自室にいる。自室で自分のモンスター達にPVの出演をするかどうか相談しているのだ。
 顔出しNGでもOK。貰えるお金もいい額だ。それでも自分なんかが、と思ってしまう。
 正直言って、自分の顔は中の下くらいだと思っている。体型だってそこまで太っているわけではないが、芸能界で言えば太っていると思える。自信なんて持てるはずがなかった。



「もーアキちゃんをルティナさんに紹介したいよ・・・」
『アキちゃんは可愛いけど日本人顔じゃないでしょ!』
「そうかなー?ってか日本人顔ってどんな顔?」
『嘉穂みたいな顔を、そう言うんじゃないかな?』
 段々と話がズレてきているのに気づき、少し慌てて話を戻す嘉穂。





「うぅ〜〜〜〜ん・・・・・」
 頭の中で必死に考えて考えて考えて、そして数十分、悩んだ時間トータル約半日でようやく嘉穂は自分がどうするか決めた。












決断













「嘉穂、遅れるぞ。」
「ちょちょっと待って!ケータイ忘れた・・・!」
 Dホイールの起動準備をしながら嘉穂にそう呼び掛ける遊星と、バタバタと忙しい嘉穂。
 結局嘉穂は、PVに出ることに決めたのだ。
 理由はやはりエンジン開発の資金調達。それで自分を受け入れてくれた3人に少しでも恩返しをしたいというのもあった。






「後ろに乗れ。」
「ぅ、うん・・・でも、1人乗り用なのに大丈夫?あたし乗って壊れたりしない?」
 Dホイールに跨がった遊星にそう言われ、やはり少し戸惑う嘉穂。自分が乗ったせいでDホイールが壊れたらなんて、しゃれにもならない。
「大丈夫だ。耐久性も十分あるし、馬力も余裕がある。何より、嘉穂はそんなに太ってないだろ。」
 そう言ってふっと遊星が笑いかければ、嘉穂は少し顔を赤くしながら遊星と同じヘルメットをかぶり、“またまたお世辞を”と内心で呟きながら遊星の後ろへと乗った。






















「嘉穂さん、お待ちしてました!」
 スタジオに案内され、失礼しますと入った途端、いきなりルティナに声をかけられ驚く嘉穂。
「ょ・・・よろしくお願いします。」
「こちらこそ!ぁ、そうだ。メンバーを紹介しますね!」
 そう言われ、嘉穂はルティナに腕を掴まれてスタッフ達をすり抜けてスタジオを小走りで駆ける。
 遊星達と会う以前は異性の人と触れ合うことをしなかったので、腕を掴まれただけで嘉穂は顔をほんのり赤くした。













「随分と初なやつだな。」


 いつの間にかルティナが紹介すると言っていたメンバーのもとへ着いていたようで、嘉穂を見てそう言った青年にそれがまたいいんじゃんかとルティナは笑う。
「嘉穂さん、俺のバンドのメンバー。」
「ぁ、星宮 嘉穂ですっ。ょろしくお願いします!」
 ペコッと頭を下げ、そう自己紹介をする嘉穂。
「そんなに遜らなくていいよ。もとはといえばルティナがほとんど無理矢理お願いしたんだから。君がルティナの言ってた通りの人なら、断れないでしょ?」
「ぃ、いえ、そんなことは・・・」
 バンドの中で1番年上そうで優しそうな青年が声をかけてくれる。
「そんな無理矢理じゃないよ!ぁ、嘉穂さん。この人はアリア。」
 よろしく、とアリアに言われ、思わずまたペコッと嘉穂は頭を下げる。
「アリアの隣のはシスカ。んで、シスカの隣がハルア。みんな見た目よりはいいやつですよ。」
「わぁーるかったなっ、見た目が悪い奴で!」
 ルティナの言葉に気に入らなかったのか、さっきも嘉穂のことを初だと言ったシスカがルティナの首を腕で締める。ルティナは笑いながらやめろーと言っている。
「本当、ごめんね。基本こういうバンドなんだ、僕ら。」
「いえいえ、楽しそうですね。」
「そのせいでやることやってない時あるけどね。今だってほら、嘉穂ちゃんに歌のこととか演出のこととか衣装のこととか説明しなきゃいけないのにこんなだし・・・」
 本当に申し訳なさそうな苦笑で嘉穂にそう言うアリア。
「ちょっとここで待ってて。僕は衣装の人を呼んで来るから。ハルア、ハルアは演出の人を呼んできて。」
 アリアがそうハルアに声をかければ、ハルアはコクンと頷いて駆けていく。それを見届けてからアリアもどこかに駆けていった。





(・・・・・優しい人達でよかった。)
 メンバー達を見て触れ合ってみて、嘉穂はホッと息をついた。








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