wings of words

□恋に興味を持ってみる
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(・・・あービックリした・・・・・)
 夜、嘉穂は自室のベッドに寝転がって右手を見ていた。
 いつも通りに迎えに来てもらったら、遊星に手を繋がれた。
(異性と手を握ったの、小学校以来かも・・・)
 まだドキドキと、胸の鼓動がおさまらない。











恋に興味を持ってみる















『本当に初ねぇ、手を繋いだくらいで。』
「だってさぁー不意打ちだし・・・」
 氷結界の舞姫が現れそう言えば、そう嘉穂は言い返す。
『まぁ氷結界にも初なのはいっぱいいるけどさぁ・・・武士(もののふ)とか大僧正とか水影とか。』
「結構いるじゃん・・・」
 だったら私も初だっていいじゃないか、と嘉穂は思ったが、それを言ったら人は人!と言われ、また怒られそうなのでやめた。
『ったく、こっちの世界に戻ってきてモテてきてるのに・・・ってぅわッ!!』
 嘉穂に聞こえないようにボソッとそう呟いている舞姫に突然、棒のような物が振り下ろされる。よく見たらそれはロッドだった。









『武士様を初などとそのような出鱈目、許しませんッ!!』
 ロッドを舞姫に振り下ろしたのは、氷結界の封魔団だった。
『な、何よ封魔団ッ!本当のことでしょ!?』
『武士様は初などではありませんッ!!武士様は戦う時のように積極的で『ったく、あんたが武士以上に初だからそう思うのよ!出会ってから約2年でキスは1回だけでしょ!?』は・・破廉恥ですぅッ!!』
「部屋で暴れるのはやめなさいッ!!お母さん本気で怒るよッ!!」
 またさらにロッドを振り回しはじめた封魔団についに起き上がって叱りつける嘉穂。すると封魔団はビクゥッと身体を震わせ勢いでごめんなさいと謝り、舞姫はお母さんって・・・と半目で半ば呆れている。











「にしても、ねぇ・・・誰かを好きになるって・・・どんな感じなの?」
 ふぅ、と落ち着いてベッドの縁に座り、気になるので何となく尋ねてみる嘉穂。
『『・・・ぇ?』』
 嘉穂の言葉に固まる舞姫と封魔団。
『嘉穂、まさか・・誰かを恋愛対象として好きになったこと、ないの?』
「うん。初恋は小学校の頃にしたけど、あれは恋に恋してた感じだし。」
『そ、その後に誰かを愛したことは・・・?』
「その後は中学の時から同い年の男子を大嫌いになったからない。高校での私なら分かるでしょ?こっちの世界の男子はいい人ばっかりだから、大丈夫なんだけどさぁ・・・」
 そう言われれば押し黙るしかない舞姫と封魔団。
 嘉穂が氷結界デッキを作り、所持しはじめたのは約2年前なので、それ以前のことは氷結界達も知らない。だが氷結界達が嘉穂と出会った頃から嘉穂が同じ歳の男を嫌っていたのは、よく分かっていた。
「そ、そんな押し黙んないでよっ!ねぇ、どーなの?」
『っ、どうって、言われてもねぇ・・・形容しがたいっていうか、何と言うか・・・・・』
 嘉穂の言葉にはっと我に帰り、口を開き始める2人。
『そうですねぇ・・・なんと言いますか、一緒にいるだけで心が温かくなったり、ずっと一緒にいたいと思ったり・・・・・も、武士様といると、私はそう思いますっ!』
 その封魔団の言葉にそうなんだ、と言う嘉穂と、その言葉にちょっと納得できない舞姫。
『一緒にいたらもっと思うわよ普通!手を繋ぎたいとかキスしたいとかあわよくばその先のえっちなことしたいとか『破廉恥ですうぅうッ!!』』
 舞姫の言葉に顔を真っ赤にして破廉恥と叫ぶ封魔団。そして再びロッドを振り回し始める。
『っやめなさいよ!攻撃力はあたしの方が上なんだから!ってか事実でしょ!?普通そう考えるって!きっと武士だって『貴女に武士様の何が分かるのですか!!?』』



『やめろ、封魔団。』
 振り回すロッドを後ろから素手で止めたのは、封魔団の最愛の人、氷結界の武士だった。
『も、武士様・・・』
『お前に攻撃は似つかわしくない。』
 武士にそう言われれば、顔を赤くして大人しくなる封魔団。そんな封魔団の顔を見て、これが恋愛している女の顔なんだなと、ふと嘉穂は思った。
『主、ご迷惑をおかけしました。』
「ぇ?うぅうん!そんなことないよ!」
 嘉穂が武士の言葉にそう返すと、武士は失礼いたしますと封魔団と共にふっと姿を消した。
『はぁ・・・武士は自分が初なのに自覚があるからまだマシなんだけど、封魔団は変に自覚ないから・・・なぜか初って言われたりすると怒るし・・・・・』
 2人が姿を消してからそう愚痴を漏らす舞姫。
「まぁ、モンスター達もそれぞれって感じ?個性個性!」
『個性ありすぎるのよ!下手すれば人間以上に個性豊かよ!』
 嘉穂の言葉にすかさず舞姫はツッコミを入れる。舞姫のそんなツッコミの言葉に、そうかなぁ?と首を傾げる。
『っあぁ、もういいわ。封魔団と久々に喧嘩紛いして疲れたから寝る。』
 おやすみ、という言葉を最後に舞姫も姿を消す。嘉穂はデッキケースに向かっておやすみと返した。









(はぁ・・・にしても、恋・・ねぇ。)
 舞姫が姿を消してしばらくしてそう思いながら、何となくエクストラデッキからスターダスト・ドラゴンを取り出し、見つめる。
(・・・・・まさかね。)
 そう心の中で呟き、スターダスト・ドラゴンをエクストラデッキに戻す。




 その時の嘉穂は、先ほど封魔団が見せた表情と同じような表情を見せていた。








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