wings of words

□愛≒哀
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「嘉穂はどうした?」
「この先のベンチだ。早く行ってくれ・・・きっと泣いてる。」
 ハルアにケータイで嘉穂のことでと呼び出された。それで急いで駆けつけて早々どうしたのか尋ねれば、きっと泣いてるとハルアに言われ、遊星はハルアの胸倉を掴んだ。
























「貴様・・・嘉穂に何をしたッ?」
「告白した。」
 ハルアの答えに、遊星は目を見開いた。胸倉を掴む遊星の手の力がだんだんと弱まっていき、胸倉をゆっくりと離す。
「結果は、フラれた・・・に、入るだろう。」
「随分と曖昧だな。」
 遊星の言葉に、いろいろとあったんだ、とごまかすハルア。両思いとまでは流石に教えない。これは互いのことだから、第3者である自分が伝えるべきではないと思ったからだ。だから嘉穂にも、あえて遊星の名前は出さなかった。




「・・・それより、早く嘉穂のところに行け。」
 そうハルアに言われると、遊星はハッとして嘉穂がいると言われた方へ走っていった。
 それを見送って、ハルアはもと来た道を歩きだす。しばらく行くと、ハルアを迎えに来たルティナ、シスカ、アリアの姿が見えてくる。
「ハルア、頑張ったね。」
「まぁ・・・もーちょっと強引さがあってもいいと思ってたけどなぁ。」
「アリアと一緒にしない!・・・にしても、結果が分かってはいたといっても、やっぱり辛いでしょ?」
 ハルアの頭を優しく撫でるアリア。そんなアリアの表情は優しく、でもどこか悲しそうな表情・・・

 頭を撫でられ、俯きながらも、ハルアは一言、アリアの言葉に答えた。



「・・・それでも、好きになった相手が嘉穂で後悔はしていない。






 嘉穂を愛せて、よかった。」




















「嘉穂っ・・・」
 嘉穂を見つけた遊星が嘉穂に近づき、嘉穂の名を呼ぶ。
 嘉穂はピクッと肩を震わせ、でも顔は俯かせたままで、表情は全く読み取れない。
「・・・嘉穂、顔を上げてくれ。」
 遊星が静かにそう言っても、嘉穂は小さく首を横に振って顔を上げない。
「嘉穂。」
 そうさっきよりも強く名前を呼び、無理矢理顔を上げさせる。








 そこにはハルアが言っていた予想通り、嘉穂の泣き顔があった。


 嘉穂が初めて遊星に見せた時の涙とはまた違う涙。











「・・・何があった?」
 遊星の問いに、唇を噛んで口を噤む嘉穂。だが真っ直ぐな遊星の目に勝てず、嘉穂は口を開いた。



「っ、はるあに、こくはくされて・・ヒクッ、でも・・・その、きもちにこたえ、られなくて・・・っふ、わたしに、そんな・・・たいそうな、こと・・するしかく、ない、ヒクッ・・・の、に・・・っ」
「・・・自分を責めるな。嘉穂にも自分の好きな人を決める権利がある。ハルアだって、後悔はしてないはずだ。」
 あまりに弱々しい姿と言葉に、遊星は自然と嘉穂を抱きしめていた。そして嘉穂を守るように言葉をかける。


 そんな中、嘉穂は遊星の腕の中で泣きながら呟いた。











「・・ぁいされる、のが・・こんなに、つらいなんて・・・」







 嘉穂のその言葉に、遊星はピクッと反応する。


 嘉穂に思いを寄せている遊星にとって、嘉穂からのその言葉は、かなり堪えるものがあった。




 ギュッと力強く嘉穂を抱きしめ、遊星は震える唇を動かす。











「そんなこと言わないでくれ・・・頼む・・・っ」



 遊星のその言葉は、嘉穂に縋るような、そんな弱々しさがこめられていた・・・



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