捧物

□デートは計画的に
1ページ/1ページ

「黒子っち!デートしよ!」

誘われたのは先週のこと。
練習やそれぞれの用事で中々会うことができていなかったから、この誘いは素直に嬉しかった。
了承すると受話器越しに相手の喜びが伝わってきて、少し照れたりもした。
ただ。
黄瀬くんが指定した日にちに、一抹の不安が過ぎる。
まさか、ないとは思うのだけれど。
黄瀬くんとの通話が終わってすぐ、ある人にメールを送信した。

::

「…やっぱり、こうなったね」
「……はい」
「アイツら、馬鹿か?」

念には念を入れたにも関わらず、それは全て無駄に終わってしまった。
苦笑する高尾くんと呆れ顔の若松さんに囲まれて、僕は大きなため息を吐いた。

「なんで俺と黒子っちのデート邪魔したんスか!!」
「それはこっちのセリフだ!テメェらよくも俺と若松サンのデート邪魔してくれやがったな!」
「全て俺のセリフなのだよ!俺と高尾は久々のデートだったと言うのに…空気を読め!」

この言い争いが不毛だということに気付いてくれないだろうか。
あのとき過ぎった不安は、こうして現実となってしまった。
黄瀬くんが指定した日にちは、高尾くんが緑間くんと出かける日に被っていたのだ。
近所にいるわけではないから会わないとは思っていたけれど、もしものことを考えて連絡をした。
すると、高尾くんだけでなく若松さんとも予定が被っていることが判明した上に、予定していた場所まで一緒だった。
僕たちはこの迷惑で不毛な状況を回避するために相談をした。
けれど、日にちをずらすことは全員難しかった。
ならばと行く場所を変えるように提案したが、見事に失敗する。
何があるのか知らないが、頑なに変えようとしなかった。
日にちと場所、更に悪いことに時間まで被る最悪な状況になってしまった。
それでも何とか回避するために、回るコースをそれぞれ考え、逐一連絡を取り、決して会わないように計画した。
した、のだけど。

「ここまで無駄に終わると逆に清々しいな」
「何なんスかね、キセキの世代ってテレパシーで繋がってたりすんの?」
「さぁ…知りませんでした」

結局は全員集合して、こうなってしまったわけだ。
途中までは順調だったのに、何故かいきなり揃って同じ場所へと向かい出したのだ。
勢いは凄まじく、止めることは叶わなかった。
まったく、何だと言うんですか。
僕たちが呆れているのも気付かず、三人は未だに不毛な言い争いをしている。

「俺だってそうっス!同じ学校の二人と違って会うのも久々なんスから邪魔しないで欲しいっス!」
「はっ、そんなんフラれたお前がダメなんだろ。それに俺だって学年違うし、練習だってそんな出てねーから毎日は会ってねーよ。一番の邪魔は緑間だろ」
「確実にお前が悪い!それに毎日会ってないと言いつつ、教室まで押しかけたり練習に呼ばれたりでほぼ毎日会っていると高尾から聞いているのだよ!毎日会っているのに先輩に邪魔されるこっちこそ大変だ!」
「それは緑間っちがヘタレ下睫毛占いバカだからいけないんス!俺の方こそ毎日毎日黒子っちが火神っちに何かされないか心配で心配で…確認メール送っても無視されるから本当に何かあったらどうしよう!あとフラれてないっス!」
「どうだか!つか何で緑間のが俺らのやり取り知ってんだよ。いつの間に仲良くなりやがったふざけんな!」
「ふざけるなはこっちの台詞なのだよ!何でお前の恋人が高尾にメールをするんだ!黒子ともよくメールをしているようだし、人の恋人をたぶらかすのもいい加減にするのだよ!」
「はぁ!?たぶらかしてるのはそっちじゃないスか!」

たぶらかしてないし、されてないですよ。
もうため息も出なくなってくる。
いつもいつも僕たちを放って喧嘩して、何がそんなに楽しいのか。
大体、この喧嘩する時間をなくせば二人でいる時間が増えるのに。
どうしてそれがわからないのか…。
今日、楽しみだったんですけどね。

「くーろこ!」
「へ、は、はい?」

突然声をかけられて、驚きで体が跳ねる。
高尾くんは僕の顔をじっと覗き込んだ後、若松さんに何かを耳打ちする。
それからまた、僕に向き直る。

「デート、楽しみだった?」
「まぁ、久しぶりですし」
「そうか。じゃあ俺らが始末つけてやる。高尾、行くぞ」

始末?
横で凶悪な顔をしている若松さんを見ると、嫌な予感しかしない。
乱暴なことはしないはずだけど、どこか心配になってしまう。
二人は僕の心配をよそに、不毛三人組に歩み寄る。

「真ちゃーん!」
「なっ…高尾!いきなり抱き着くなと…」
「うるさい、イルミネーション見るならアッチでもいいっしょ。大人しくついてきてよ。嫌なら帰る」
「…わ、わかったのだよ」

高尾くんは有無を言わさずに、

「お前もだ、さっさと行くぞ」
「は!?おいっ引っ張るんな!苦し…っ」
「うるせー、イルミネーションだなんだ言いやがって女々しいんだよ。つか、見る場所に指定ないんだろ?」
「ねーけど…アイツらに譲りたくねえ!」
「アホか!」

若松さんもほぼ無理矢理、青峰くんを引きずって行った。
残された黄瀬くんは呆然とした様子で、僕の方を振り向いた。
……まったくもう。
僕は二人にそっと感謝して、黄瀬くんへ近付く。
そして、膝カックンをお見舞いした。

「うわっ」
「ほら、二人が気を利かせてくれたんです。早くいい場所に行きますよ」
「え、え?黒子っちまさか…」
「知りませんでしたが、さっきわかりました」

恋人同士で見るとずっと幸せでいられるイルミネーションがなんだとか、計画を立てていたときに高尾くんが言っていた。
まさかと思って気にしなかったけれど。

「ジンクスもいいですけど、あのままだったら見れない上に僕は呆れて帰りますよ」
「ごっごめんなさいっス!」
「いいですよ、今いてくれれば」

えっ、と目を丸くする黄瀬くんに笑う。
色々あったけど、まだまだ楽しむ時間はあることだし。

「デート、するんでしょう?」
「黒子っちーっ!」

思い切り抱きしめられる。
もう少し人目を気にするようにしてほしい。
でも。
今日は久しぶりなので、大目に見てあげます。

END

::::
キリ番24600を踏んで下さった小夜様に捧げます!
気持ち黄黒メインにさせていただきました。
仲良し黒高若で黒子メインな感じな話になったような気も…しなくも。

リクエストありがとうございました!
よろしければお持ち帰りくださいませっ。

111003

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ