稲妻

□セカンドテレパシー
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テレパシーってね、本当にあるんだよ。
そう言って、吹雪は空港で笑っていたっけ。
割り振られた自室のベッドに転がり、何もない天井を見つめる。
手には、音のならない携帯電話。

「源田…」

ここにはいない恋人の名前を呟く。
いつも隣にいて、顔を合わせて、声を聞いて、当たり前のように一緒だったのに。
今はいない。
ライオコット島に来れてとても嬉しいはずなのに、そのせいで気持ちは塞いでいく。

「源田ー」

もう一度呟いたって返事が返ってくるわけない。
その事実が、寂しかった。
息を吐いて携帯を開く。
俺から電話をしてみようか。
迷惑だと言われることは多分ないだろうし、してみるのもいいかもしれない。
あ、でも時差とかあったら困る。
授業中だったり練習中だったら本人は言わなくても迷惑になる。
そう考えると浮上しかけた気分が急速に萎んでいってしまった。
明日も練習があるし、早く寝よう。
諦めて布団の中へと潜る。
それでも未練がましく、携帯は枕元に置いてあるけれど。

「…会いたい、な」

離れてから相手の大きさがわかる、なんてことを体験するとは思わなかった。
目を閉じると源田の笑顔が浮かんできて、俺は相当末期らしい。
あの日空港でテレパシーがあると言っていた彼は、だから離れていても大丈夫と笑っていた。
それなら俺も…俺達にもないだろうか。
この焦がれた気持ちが伝わるものが、あったらいいのに。
その時、待ち望んでいた着信音が耳に届いた。
相手の確認もせず電話に出る。

『佐久間、今大丈夫か?』

聞きたかった声がそこにあった。
自然と緩む口元はそのままにしておく。
嬉しいのを隠す必要は今はない。
返事のない俺を不安に思ったのか、電話口から聞こえる源田の声は少し頼りなくなってくる。
きっと失敗したかと慌ててるんだろう。

「ばーか」
『…第一声がそれか?』

笑いながら言えば源田の声も笑っていた。
声しか聞こえないけれど、どんな表情をしているかは想像に難くない。
困ったような、安心したような顔をしているんだろう。
二人で笑いあって、落ち着いてから近況を報告し合う。
こっちに来てそんなに時間は経っていないのに、話すことは沢山あった。


「なぁ源田」
『ん?』
「どうして電話してくれたんだ?」

聞けば、源田は少し唸って怒らないか?と言う。

「怒られるような理由なのかよ」
『いや、そうじゃないが…ただ』
「ただ?」
『佐久間が呼んでいた気がしたんだ』

心臓が跳ねた。
そこから発生した熱が全身へと広がっていく。
ちゃんと、通じてた。
源田と自分に繋がるものがあったことがとても嬉しくて。
普段は憎まれ口ばかり叩いてしまう俺だけど、今は素直になりたかった。

「…お前は呼んでなかったのかよ」
『は?!いや、俺だってずっと…』
「もういい」
『さ、佐久間…?』
「大好きだ、源田」

一瞬の間の後、力強く言われた言葉に、俺は笑った。

ああ、今度報告しないといけない。
テレパシーはあったんだってこと。

END

::::
初源佐久。
大好きなのにすごく難しい…。
とりあえず源田は毎日電話しようとして撃沈してたはず。
3番手は円ヒロの予定。

101106

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