黒子

□見えない
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『かに座の今日のラッキーアイテムは、初恋の人の待受!』
「……、…へぇ」

何それ超気になる。

::
高尾は酷く緊張していた。
恋人である緑間の部屋にいるからか、しかもその恋人がシャワーを浴びに部屋から出て行ったからか。
それらしい理由はいくらでもつけられるが、どれも今の高尾には当て嵌まらない。
そもそも真ちゃんが何かするとか思えねーし。
少し残念な思いを抱きながら、高尾はある物を真剣な面持ちで見つめる。
ベッドの上に無造作に置かれた、緑間の携帯電話を。
そっと手を伸ばし、すぐに引っ込める。
何度か繰り返して、溜息と共にベッドへ顔を伏せた。

「…気になる」

真ちゃんの、初恋の人。
おは朝の占いを信じてる緑間のことだ。
ちゃんと占い通り、待受を初恋の人にしているだろうと高尾は思っていた。
朝からずっと気になっていて、緑間からの泊まりの申し出によってチャンスを得たがいいが、確かめられていない。
気になるけど知りたくない。
そんな気持ちが高尾の中で渦巻いていた。

「すっげー可愛い女の子だったらどうしよう…。つか黒子だったりしたらどうしよう」

恋愛感情はこれっぽっちもなかったと言っていたけど、今更初恋だと気付きましたなんてことがあったりするかもしれないし。
どうしよう、そんなことになってたら泣く気がする。
意気地無し、と呟いて、携帯に手を伸ばす。
携帯を開いて画面を見るという簡単なことなのに、どうしてこんなに難しいのか。

「……あー!もう!緑間の眼鏡!馬鹿!」

そんなことを叫んで、勢いのままに携帯を開く。
開いた勢いとは正反対に、画面を見る動きは恐る恐るだ。

「あれ?」

ようやく見れた待受画面は、初期設定から変えていないようなシンプルなものだった。
どう見たって人など写っていない。
携帯を閉じて、首を傾げる。
真ちゃんが占いを実行しないなんてありえるのか?
昔のことすぎて手に入らなかったとか?
何があってもやりそうなのに。
けれど実際に待受にはなっていないのだから、腑に落ちなくともどれかの理由で納得するしかない。
残念だけれど、少し安心した。
ベッドに背を預けるように座り直して、緑間が戻ってくるのを待つ。
程なくして緑間が戻ってきたので、入れ代わるように高尾は部屋から出る。
扉を閉める前に、高尾は緑間に声をかけた。

「真ちゃん」
「何だ」
「んー…やっぱいいや」

緑間の怪訝そうな視線を無視して扉を閉める。
部屋に残された緑間は携帯を拾い上げ、その画面に目を向けた。
高尾が見たときと変わらない、シンプルな画面。
おそらくこれを見たのだろう、と気の抜けた表情をしていた高尾から推測する。

「だからお前は馬鹿なのだよ」

携帯の画面を捻り、そのまま閉じる。
横画面になったそこには、さっきまでこの携帯と格闘していた少年の寝顔が映っていた。

END

::::
私の携帯が縦と横で待受変えられるのでなんとなく緑高でやらかしてみました。

100920

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