黒子

□照れたり、
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綺麗だなぁ、と思ったのは何度目になるのか。
横で本を読む真ちゃんをじっと見つめる。
顔は言わずもがな、ムカつくくらい整っていらっしゃる。
白いし睫毛長いしー…なんか女の子への褒め方になってる。やめとこ、すげえ複雑だから。
とにかく、いつだか見たモデルの黄瀬くんと並んでても見劣りしてなかったし、これでバスケも上手いって付加価値がつくんだから女子が影で騒ぐのも当然なわけだ。
恋人としては面白くない。
でもそれ以上に、実はモテたりしちゃう真ちゃんの恋人の座をゲットしてることが嬉しかったりもする。
うん、複雑な心境。

「おい」
「ん?」
「さっきから人のことをジロジロと何なのだよ」
「何って…見てるだけ」

あ、ムッとしてる。
真ちゃんは結構わかりやすい。
本人は隠しているつもりでもすぐ空気に出る。
さっきの休み時間だって女子に嫉妬してたのがすぐにわかった。
愛されてるなー、俺。なんて調子に乗ったせいで、ちょっと痛い思いをしたけど。
真ちゃんの肩に頭を乗せて、上目遣いになるようにして見つめる。
少し困ったようになるところが、俺は気に入ってたりする。

「真ちゃんって綺麗だなー、って見てただけだぜ?」
「…馬鹿か」
「だって綺麗じゃん、顔」
「……」
「一番好きなのは顔じゃないけど」

そう笑うと真ちゃんは顔を逸らしてしまう。
怒らせただろうか。
肩に頭を乗せたまま、上を見上げる。
空は雲一つない青空でとても綺麗だったけれど、やっぱり俺は真ちゃんの方がいい。
本のページを捲る真ちゃんに視線を戻して声をかける。

「なー、真ちゃん」
「何だ」
「調理実習中止になって残念?」
「寧ろよかったのだよ。包丁など持って怪我をしたらどうする」
「そうはしないと思うけど、もしかして料理苦手?」
「やらないだけなのだよ」

できないんだ…。
ちょっと意外だけど、納得もする。
真ちゃんの指はすごく大切なものだから。
顔も綺麗だけど、一番綺麗なのは指だと思う。
バスケをしてるときだけじゃない。
今こうして本のページを捲る指先だって、すごく綺麗だ。
ぼうっと指先を見つめていたら、その指先が伸びてきて俺の手にそっと触れた。
驚いて顔を上げると、さっきまでは逸らされていた顔がしっかりとこっちに向けられていた。
ああ、やっぱ顔も綺麗だ。
鼓動が少しずつ早まっていくのを感じながら、相手の言葉を待つ。
きっとすごい爆弾を落としてくるはずだ。

「俺ができなかったら、お前がやればいい話なのだよ」

ほら、やっぱり。
予想以上の爆弾に顔が真っ赤になる。
言った本人は俺が赤くなる理由も、言葉の大きさにもわかっていない。
これだからコイツはモテる癖に何も起きないんだ。
起きたら困るけど。
指先を握り返して膝に顔を埋める。
しばらくは熱が収まりそうにない。

「緑間」
「…何だ」
「今の、プロポーズみてぇ」「な…っ?!」

きっと緑間の顔も赤くなったはずだ。
俺だけなんて狡いじゃん、ざまあみろ。
でもめちゃくちゃ嬉しかったから、ちゃんとそこは誤解ないようにしておく。

「得意じゃないけど、毎日みそ汁くらいは作ってやっるよ」
「上から目線が気に食わないが…、……任せるのだよ」
「…おう」

恥ずかしいったらありゃしない。
ちらりと盗み見た真ちゃんの顔は想像よりも赤くて、嬉しいと思うのと同時に、いい加減思いたくないけどすごく綺麗だと思った。

END

::::
緑高の日おめでとう!そのに。
高尾も緑間にはべた惚れと書きたかった、はず。

100610

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