09/28の日記

19:54
05*前夜
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「もんじろー。そんなに落ち込むな!」
「そうだよ。なんとかなるよ!」
「バカタレ。そう言ってる間にすっかり夜じゃねぇか」
「不思議だよな。石の木に光る実がなってる」

 再び紙箱の淵に登った小平太と連れてこられた四郎兵衛がきょろきょろと外を見ている。

 辺りはとっぷり暗くなり、ずらり並んだ街灯がコンクリートの道を照らしていた。

「ななまつせんぱい、あれは何なんでしょうね」
「松明のかわりなんだろう。明るいな」
「ふたりとも降りておいでよ! 危ないよ!」
「あっ!」
「お!」

 四郎兵衛と小平太が何かを発見したらしい。

「わわわわわわ……」
「すげー!!」


「にゃああぁご」


「もんじろ! 見ろ、もののけた!」

 きらきらと振り向く小平太の背後から、巨大なネコがぬぅっと姿をあらわした。

「ばかたれ! 早く戻れ!」
「わぁっ」

 ぱくっ

「しろべー!」
「ひぃっ、食べられちゃうっ!」

 段ボールにしがみつく四郎兵衛の襟ぐりをくわえ、ぐいぐい引き剥がそうとしている。

「もんじろ!」
「おう!」

 だっと飛び出し、小平太と共に猫の顔面に張り付く!

「ウゥーー……」

「離せこら!」
「餌じゃねぇぞ!」


「ウゥーー……
ニャゥ!!」



 ついに四郎兵衛の手が離れた。ぶんぶんと頭を振りふたりを撥ね飛ばそうとする。

「こんの!」
「暴れんな!」


 ぐいっ!!


「ニャッ!?」

 ふたりがネコの視界をふさいだ。
 驚き声をあげるネコの口から、四郎兵衛が投げ出され……

「わぁ〜〜!!」
「……ぎゃ!!」


  伊作の上に着地。


「伊作よくやった!」
「戻るぞ!」

 ひらり猫パンチをかわし、段ボールの中に戻る。
 振り向けば、ネコは大慌てで姿を消した後だった。


「大丈夫か!?」
「ふぁ〜い……」
「そうか。良かった!」
「……おりてもらっていいかな?」
「おぉ、いさっくんそんなとこに居たのか!」

 わはははと四郎兵衛を引っ張り起こす。

「いやぁ、びっくりしたな! しろべー良く頑張った。偉いえらい!!」
「ひゃーー!」

 両手を握られたかと思うと、ぐるぐると回される四郎兵衛。

「……あれ誉めてんのか?」
「ねぇ、もんじろ。これからどうするつもりなの? 敵も来るし食料もない。ずっとここには居られないよ」
「……そうだな」
「捨てられたんだから、誰かに拾って貰えばいいと思うぞ!」
「はぁ?!」


 ぐるぐる


「ばかたれ! またどうせ捨てられるに決まってんだろ!」
「そんなのわかんないぞ! 優しくて私たちを好きになってくれる人を選べばいい!」
「そんなのぱっと見ただけでわかるわけ……」


 ぐるぐる


「よし。そんなに心配ならわたしが選ぶ!」


 ぽーん!


 っと投げてキャッチ!


「少なくともここでじっとしてるよりはマシだろ?」

 にぃっと笑う小平太。

「……まぁ」
「よし、決まりだな!」
「ふぁ〜い」
「しろくん大丈夫?」


 まだ少し納得のいかない文次郎。


 四人が小梅と出会ったのは、翌日の夕方だった。





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