09/30の日記

18:39
06*翌朝
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「おい、伊作」
「ん……。んー?」

 文次郎が伊作を揺すり起こす。

 小梅の部屋に来てはじめての朝。カーテン越しの朝日が、やんわり部屋を照らしている。

「起きろ、話がある。小平太戻って来い」
「ん? どこにいるの」
「あそこだ」

 文次郎が机のすぐ側に置かれたベッドを指差す。
 ぐーすか眠る小梅の腹の上に濃紺の毛玉が。呼吸に合わせて上下していた。

「こへーた!」
「おい、起きろ!」
「んー、すぐもどる……」

 もぞもぞと起き上がり、伸びをひとつ。
 小梅の肩から降り、だらだらと机に戻った。

「小梅あったかい」
「だからって上で寝る奴がいるか!」
「っで、話って?」
「おぉ……」

 ぐるりと円座になる。

「小梅に拾ってもらってここにいる訳だが。四人の面倒を見て貰うのは悪い気がしてな……」
「うーん……。まぁ確かに大変かもしれないね」
「やっぱりみんな一緒は駄目か?」
「僕、小平太と文次郎を同時に面倒見れる自信ないもん」
「加えて不運にまだ小さい四郎兵衛。女ひとりの手には余るだろ」
「そーか……。ふたりが言うなら仕方ないな」

 四郎兵衛もこくりと頷く。

「よかった。
問題は、小梅ちゃんの友達に僕等を引き取ってくれる人がいるか、四郎兵衛くんが誰と組むかだね」
「しろべーは私と組むだろ?」
「っと思ったんだが……。お前どう考えても一対一じゃなけりゃ手に負えないだろ」
「なんだとー!」
「ばかたれっ 声がでかい!」
「んー……。
 あぁ、よかった夢じゃない……!」

 小梅がぼさぼさの頭を持ち上げ、にこりと笑った。

「みんなもう起きる?」
「いや、まだ早いから小梅は寝ててくれ」
「文次郎優しーんだ」
「そっ……そんなんじゃねぇよ」
「つんでれだぁね」

 よいしょと起き上がると、お猪口に水を注いだ。

「喉乾いたら飲んでね」
「ありがとう!」
「どういたしまして。んじゃお言葉に甘えて二度寝させて頂きますー」
「小梅、小梅! わたしも二度寝したい! 一緒に寝たい!」
「危ないよー」
「だいじょうぶだぞ!」

 ぴょんとベッドに飛び移るとそのままタオルケットに潜り込む。

「しょうがないなぁ」

 なんだかんだ嬉しそうな小梅。小平太を潰さないよう布団に潜り込む。

「おやすみなさい」
「おやすみ!」
「おい小平太! どうすんだよ!」
「わたしはしろべーの気持ちを尊重したいと思うぞ!
 なぁ小梅、わたしたちを引き取ってくれそうな友達はいないか?」
「友達? そっか…。ここじゃ狭いかな……」
「小梅が嫌いなわけでも、みんないなくなる訳でもないぞ!
 ただな、小梅の事を考えたらわたしたちは別れて世話になった方がいいと思ったんだ。主にもんじろーが」
「……心当たりがないわけじゃない」
「ほんとう!?」
「うん」
「優しくてもんじろーを好きになってくれそうか?」
「…………。すごく可愛がってくれると思うけど……」
「よかったなもんじろー!」
「なんで俺の心配なんだ」
「だってわたしは小梅がいい。小梅ー!!」
「うひゃっ。くすぐったい!」

 小梅の首元に張り付き、ぐりぐり頭を押し付ける。

「決まりだね」
「まぁ小梅を選んだのは小平太だからな」

 文次郎はやれやれと笑っている。



 そのまま小梅は二度寝に突入。噂の友人に連絡を入れたのは暫くしてからだった。




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