10/16の日記

16:28
11-桃*お風呂
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「おー……。でかい……」

 なみなみと張られたお湯。柔らかく昇る湯気とバラの香り。ふたりは浴室に到着。


「……なんだこのにおいは」

『入浴剤だよ! ささ、着物脱いで♪』

「なっ……。断る!」

『服のまま入るつもり? それにその忍者服、暫く着たままなんでしょ? 洗わなきゃ』

「う……。うむ」


 にーっこり笑う桃子を横目で気にしながら(背を向けると危険だと学習した)渋々服を脱ぐ。


『なにこの小さい褌……!(可愛い!!)』

「あぁ? 普通だろ。
 それよりも、どうやって入りゃいいんだ」

『ん、鍛練コースとゆったりコースがあるけど』

「鍛練こーす?」

『この大きなお風呂で泳ぎながら温まります』

「ゆったりでたのむ」(身体的に疲れてる)

『あれ? 鍛練は?』

「ふ……風呂では泳がん」(精神的にも疲れてる)

『はーい』


 お風呂の蓋を半分閉め桶を設置。文次郎を桶に移すと、ゆーっくりお湯を注いだ。


「あ゛ーー……。気持ちいい……」


 反応がおっさんだ。


『湯加減は如何ですか?』

「丁度いい」


 ぱしゃぱしゃ顔を洗う。行動もおっさんだ。


 暫く温まっていた文次郎は湯から上がり、桃子特性まめスポンジで体を洗い出した。

「この石鹸すごく泡立つな!」


 余程気に入ったのか、事あるごとにスポンジを石鹸に擦り付け泡立てる。


『潮江、背中流そうか?』

 桃子がうずうずと声をかける。


「おぉ頼む」

『はーい(心の中でガッツポーズ)』


 ごしごしごし


『潮江の背中は小さいねー』

「当たり前だろ」

『えへへ』


 続いて洗髪に入る。


「……すごい匂いだな」

『快感シャンプー体験だよ』

「しゃんぷー?」

『細かいことは気にせず。私に任せて!』

「お…、おぉ」


 しゃかしゃかしゃかしゃか


『どう?』

「……いい」

『でしょー!』


 大人しく身を任せる文次郎。


「……あのよ」

『ん?』


 ぽつり、口を開く。表情は見えない。


「なんでまず風呂なんだ」

『んー、やっぱり裸の付き合いっていいかなと思って。潮江と仲良くなりたしい』

「……」

『?』


 文次郎は何か考え込んでいる様子だ。


「……伊作じゃなくてよかったのか」

『え?』

「その……。女子ってのは伊作みたいなのがいいんじゃないかと……」

『ん?』

「……もういい」


 むくれる文次郎。耳が真っ赤だ。


『うそうそごめんね! 私潮江が良いんだもん!』

「……ありがとな」

『うん!』


 えらい恥ずかしそうだ。


『……もんちゃんかわいい!!』


 ひょい ぎゅっ!


「だぁー! 泡だらけになるじゃねぇか! 離せこらっ」

『んじゃ脱ごうか!』

「ばかたれっ やめんか!! ちっ……乳が当たるんだよ!」

『きゃーもんちゃんのえっち!』

「やかましい!!」


 大騒ぎの浴室。


 少し強引だが文次郎の警戒心もある意味解けたようだ。





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