10/25の日記

21:56
12-梅*お布団
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 今日も小平太は元気いっぱいだ。

 小梅の部屋の天井近くまで伸びるメッシュパネルを危なげ無く登ったり降りたりしている。


「こうめー」

『なーにー』


 雨降る日曜日。小一時間ほどで満足したのか小平太が服を引っ張った。


「かーまーえー!」

『待っててねー』

「えーー……」


 小梅は床に座り込み何やら作業中。

 小平太は構って貰えずぶーっと膨れている。


「小梅、小梅、小梅。ここここここ……」

『んもー、甘えんぼ!』

「わー!!」


 わしゃーっと頭を撫でるとお腹を上にして寝っ転がった。ネコみたいだ。


『うりうり』

「わーー!」

『こしょこしょ……。はい、おしまい!』

「えー!! もっとー!」


 小梅の手にまとわりつく。


『わっ、こら危ない! はさみ使ってるの!』

「だってー……」

『これ終わったら遊んであげるから。はい』


 よしよしと頭を撫で、小さめのバランスボールを差し出した。
 真っ赤なそれはりんご模様だ。


「うー……。……なんだこれ! 弾む!」


 ばしこんばしこん叩き出した。


「よっと……。おーー!!」


 ぽんっと飛び乗りしがみついたかと思えば、そのまま跳ねて移動し始めた。


「おもしろい!」


 ぼよん ぼよん ぼよん


『(器用だなぁ……)気を付けてね!』

「おう! いけいけどんどーん!」



 弾みまくる小平太をよそに、小梅の作業は続いた。


 …………


『で き た ……!』


 製作時間 約1時間
 費用   1000円(布)
 達成感  プライスレス

『こへちゃん! こへちゃん!』

「終わったかー!」


 ぼよーん ぼよーん ぼよーん


『(さっきより高く跳んでる……!)ほら出来たよ!』

「おぉ!! なんだこれ!!」


 それはほんの1時間前までただのカゴだった。

 壁にかけるポケット型のカゴ。


 中は安心、保温の二層構造。オフホワイトの布の上に、小平太お気に入りのタオルが敷かれている。

 小さな枕は柔らかく、隣にはふわふわの夜着が畳まれていた。


「これっ」

『こへちゃんの寝室だよー!』

「わーー!!」

『桃子と遊びに行ったとき見つけたんだ!』

 わーわーっと回りをぐるぐる回る小平太。入り口となる縄梯子の横にかかった【小平太】の文字にきらきらと目を輝かせた。


『これをこうやってメッシュパネルに付ければ……。ほら! いい眺め!』

「すげー!!」


 早速よじ登る小平太。タオルに埋もれる姿は小鳥の様だ。


「巣みたいだな!」

『可愛いよー! ほんとは段ボールでお部屋にしようかと思ったんだけど、こへちゃんには狭いかと思ってねぇ』

「すごく寝心地良いぞ! これは?」

『この夜着は桃子に(無理言って)作ってもらったの。布は桜と選んだんだよ』

「ふわふわ!」

『ふわふわ!』


 えへへっと笑い合うふたり。


「夜が楽しみだ!」



 …………


 夜。


『じゃあ、おやすみなさいこへちゃん』

「おやすみー!」


 元気よく返事をする小平太。小梅は電気を消すとひんやりと冷たい布団に潜り込んだ。



 ……暫くして。


「……」


 ごそり


『……ん? うひゃっ!!?』

「こうめー……」

『こへちゃん!?』


 胸元から小平太が顔をだした。


『どうしたの? 寒い?』


 ふるふる


『怖かった?』


 ふるふる


 ぎゅっと小梅のパジャマを掴んだ。


「……一緒がいい」

『ん?』

「せっかく作って貰ったんだ…けど……。小梅と一緒がいい」


 きゅん…!!


 悶える! 鼻血出そう!


「小梅は嫌か?」

『やじゃないよ……!』

「でも寝床……」

『潰しちゃうのが怖くて作ったんだよ。こへちゃんと寝るのが嫌だったんじゃないよ』

「こ……こうめー!!」


 だっと掛け布団から飛び出すと首もとに飛び付いた。

 物凄くくすぐったい!


「私潰されないぞ! っというか潰されたけど大丈夫だった!」

『え!?』

「んーと。一回目は腕でー、二回目は背中。昨日はお尻!」

『なんですって……!』


 またなんでお尻?


「だから大丈夫だ!
それに、小梅の方が温かいし柔らかくて気持ちいい!!」


 嬉しそうに擦り寄る小平太。



 あぁ……。幸せ……!



 今年の冬は、あたたかく過ごせそうです。




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