BOOK2

□letter...
1ページ/3ページ

ぼんやりと佇む修練場の柱の影は、日陰になっていてほんの少し涼しい。

「……」

フェイトは清々しく澄んだ青空を見上げたまま、今は遠くにある地球へと思いを馳せた。

母や幼馴染の事、大学のことや、向こうで仲の良かった友人達のこと。

色々な事がよぎる。
しかし、それ以上に気にかかるのは漆黒という団をまとめる団長。
アルベルのことだった。

「まったく…アルベルの馬鹿…」

先日、フラリと出て行ったきり、既に7日目が過ぎようとしていた。

「フェイト様!」
「うん?どうしたんだい?」
「そろそろ書類の方をお願いします」
「あ、ごめん」

笑いながら小走りで戻ると、団員は笑顔でフェイトを迎え入れた。

「毎日ご苦労様です」
「大丈夫さ、その代わりアルベルが帰ってきたら全部あいつに回してやるからな」
「アルベル様は何処へ行かれたのでしょうか…」
「さあね」

長い石段を下り、執務室へ下りる。
フェイトが団へ入ったとき綺麗に修復された建物は、以前よりもずっと綺麗になっていた。

パタン

木の扉が静かな音を立てて閉じる。
フェイトは一人机へ向かうと書類へとジッと目を落とした。

アルベルへの手紙が幾つも散らかっている。
どれもこれも女性からのものだった。
ただし、どれ一つとして封が開けられておらず、封をされたまま捨てられるでもなく大切に取っている訳でもなく、乱雑に散らかされていた。

「机くらい片付ければいいのに」

色褪せ始めた手紙たちを集め、適当に棚の中に直していく。
サッパリとした机の上には、見覚えのある封筒が置いてあった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ